2023.09.25

危機管理

「煽り運転」の罰則について!道路交通法改正の経緯と罰則内容を解説

交通事故やトラブルの原因として、摘発件数が増加している煽り運転。2020年には道路交通法が改正され、罰則化されています。

この記事では、重大な交通事故に繋がる極めて悪質・危険な行為である煽り運転の、定義や罰則の内容について解説します。

目次

煽り運転とは

煽り運転とは、自動車で道路を走行する運転者が、周囲の自動車や運転者を煽り、交通や通行を妨害する行為です。
 
具体的には、前方の自動車との車間距離を必要以上に詰める、蛇行運転による進路妨害、道路上の不必要な駐停車などが挙げられます。

主な発生原因

煽り運転は、運転者の心理状態が影響していると考えられています。自動車を運転している最中の人間は気が大きくなる傾向があり、些細なことにも感情が揺さぶられやすい状態にあります。
 
イライラしたり興奮状態であったりするときは、冷静な運転はできません。周囲の自動車による車線変更や追い越し行為を目の当たりにすることで、衝動的に煽り運転行為を起こしてしまうのです。

煽り運転に該当する行為

2020年(令和2年)6月10日に公布された改正道路交通法において、煽り運転は「妨害運転罪」と定義されています。2020年の6月30日以降は、他の自動車等の通行を妨害する目的で対象の煽り行為(後述)を行うことは、罰則の対象になりました。

妨害(煽り)運転の対象となる行為

煽り運転として交通指導取締りの対象となる行為は、以下の10類型です。
 

       違反の種類        違反の内容
通行区分違反 対向車線にはみ出す運転や逆走行為
急ブレーキ禁止違反 不必要な急ブレーキ行為
車間距離不保持 車間距離を極端に詰める行為
進路変更禁止違反
 
予告のない急な進路変更行為
追い越し違反
 
左車線からの追い越しや、無理な追い越し行為
減光等義務違反
 
不必要な前照灯の使用や、過剰なパッシング行為
警音器使用制限違反 不必要かつ執拗なクラクション行為
安全運転義務違反 執拗な幅寄せや蛇行運転行為
最低速度違反(高速自動車国道) 高速自動車国道における最低速度に達しない低速走行行為
高速自動車国道等駐停車違反 高速自動車国道上における停車や駐車行為

煽り運転の法的罰則と厳罰化の背景

上述の違反行為が認められた際には、妨害運転罪に基づいた然るべき罰則が課せられます。

妨害(煽り)運転の罰則

  違反行為の内容      刑罰     行政処分
円滑な通行を妨害する目的で煽り運転を行った場合 3年以下の懲役、または50万円以下の罰金 免許取り消し
(欠格期間2年)
違反点数25点
妨害を目的としたあおり運転により、交通の危険を生じさせた場合 5年以下の懲役、または100万円以下の罰金 免許取り消し
(欠格期間3年)
違反点数35点

ただし、上述の罰則は妨害運転罪単独の内容です。煽り運転により人を死傷させたり、煽り運転に伴うその他の犯罪行為(暴行罪・傷害罪・脅迫罪など)が認められた場合には、さらなる罰則が課せられます。

厳罰化の背景

煽り運転による交通事故やトラブルは、以前から発生していました。2020年の厳罰化の背景には、煽り運転が原因となって発生したと考えられる数々の事故の存在があります。
 
厳罰化がなされるまでの数年間には、全国で煽り運転が原因となった死傷事故や暴行事件がいくつも発生しました。しかし、事件当時は煽り運転を直接罰する法律が整備されていなかったのです。
 
これらの重大事件を契機の一つとして、煽り運転に対する厳罰化の需要が拡大。現在の法整備に至っています。
 
〈参考〉政府広報オンライン「あおり運転」は犯罪です!一発で免許取消し!

厳罰化の影響

法律による厳罰化は、煽り運転の有無にどのような影響をもたらしているのでしょうか。一例として、後方からの煽り行為とみなされる「車間距離不保持」の取締り件数を確認してみましょう。
 
車間距離義務違反取締り件数の推移

 
平成26
 
平成27 平成28 平成29 平成30 令和01
令和02
 
取締り件数(総数) 9,581件 8,173件 7,625件 7,133件 13,025件 15,065件 13,062件
うち高速道路のみの件数 9,033件 7,571件 6,690件 6,139件 1,1793件 13,787件 11,523件

煽り運転厳罰化のきっかけとなる事件や事故が発生したのは平成29年です。以降の取締り件数は、急激に増加しています。これは発生件数が増加したわけではなく、煽り運転が可視化されたことにより、警察の取締りが強化された結果と見るべきでしょう。
 
妨害運転罪が施行された2020年(令和2)には、取締りの総数が前年に比べて減少しています。しかし、1万件以上の煽り運転に関連する危険行為が発生している以上、決して安心することはできません。
 
妨害運転罪の施行は、煽り運転防止における一つの抑止力として機能するでしょう。ただし、抜本的な煽り運転根絶のためには、運転者一人ひとりの安全運転に対する心がけが重要です。

煽り運転の厳罰化による世相の変化

煽り運転が厳罰化されたことで、その危険性は広く認知されるようになりました。厳罰化によって、予防策や被害にあった際の対処方法を意識する人が増加するなど、煽り運転を取り巻く環境は変化しています。
 
以下に、煽り運転に効果的と考えられている予防・対応策をご紹介します。

効果的な予防策

安全運転義務に基づいた運転を心がけましょう。無理な追い越し、急な車線変更、運転者同士の無意味な意地の張り合いなどは、煽り運転を助長する要因です。運転中は冷静な判断を心がけ、思いやりや譲り合いの意識を持って運転に集中してください。

被害にあってしまったら

万が一、煽り運転の被害を受けた際には、安全な場所に自動車を停車させます。停車した自動車から出てはいけません。ドアをロックし、警察に連絡しましょう。
 
煽り運転の対処には、ドライブレコーダーの設置がおすすめです。煽り運転の一部始終を映像として録画することで、証拠として活用できます。現在では、煽り運転対策としての需要が増加しています。自分の身を守るためにも、設置を検討してみましょう。

まとめ

煽り運転は犯罪です。妨害運転罪が認められた場合には、然るべき罰則と行政処分が課せられます。自動車の運転者は、自分自身が加害者にも被害者にもなり得る事実を認識し、道路交通法に基づいた正しい運転を厳守しましょう。

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