2023.03.03

飲酒対策

電車における飲酒運転の基準は? 鉄道業界のアルコールチェックについて

飲酒運転による事故防止の施策として、国土交通省は法律による厳罰化を推し進めてきました。不特定多数の乗客を運ぶ鉄道業界も、その例外ではありません。

時には取り返しのつかない事故の原因となる飲酒運転。この記事では、電車における飲酒運転の具体的な基準や事業従事者に課せられている義務について解説します。

目次

電車の運転士にはアルコールチェックが義務づけられている

国内の鉄道業界において、酒気帯び運転は禁止されています。しかし、2019年以前の法律では、酒気帯び運転者は罰則の対象とされてはいたものの、血中や呼気中のアルコール濃度など、具体的な基準が設けられていたわけではありませんでした。
 
法律として明確な基準が設けられていなかった当時は、各鉄道会社が独自の社内基準を課し、飲酒運転対策としていたのです。
 
国土交通省では、社会全体での飲酒運転に関する規制強化を受け、鉄道事業者の運転士に対する飲酒基準の見直しを決定。2019年(令和元年)10月より「鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の解釈基準、動力車操縦者運転免許の取消等の基準」などを改正、施行しています。
 
上述の改正により、電車の運転士には、アルコール検知器による酒気帯びの有無の確認行為が義務づけられるようになりました。

鉄道運転士の飲酒に関する基準

2019年(令和元年)の「鉄道運転士の飲酒に関する基準等」の改正の概要は以下の通りです。

主な改正内容

①鉄道運送事業者に対し、運転士に対する酒気帯びの確認についての規定

 
  • ●業務の前後に酒気帯びの有無を確認
     
  • ●酒気帯びの有無を確認する手段には、アルコール検知器(ストロー式、マウスピース式)を使用し、加えて目視等により行う(業務前の確認以降、運転士が事業者の管理下にある場合には、業務後のアルコール検知器による検査は省略できる)
     
  • ●業務前の段階で酒気帯び状態が確認された場合には、該当職員の乗務を禁止する
     
  • ●確認を行った者、確認を受けた者の「氏名」「確認日時」「方法」「酒気帯びの有無」を記録・保存する

②運転士に対し、酒気を帯びた状態において列車等を操縦した際の行政処分(運転免許の取り消し)】適用の目安について

 
  • ●体内に血液「0.2g/ℓ」以上、または呼気「0.09mg/ℓ」以上のアルコール濃度の保有が認められた場合
     
  • ●上記の数字に関わらず、飲酒の影響により、反応速度の遅延など列車等の正常な操縦に支障をきたすおそれがある場合

鉄道業界における飲酒基準改正の背景には、2011年の道路交通法改正や、2019年の航空業界における飲酒基準の制定などを挙げることができます。

運送事業業界全体として飲酒の厳罰化を推進することで、飲酒運転を撲滅することが大きな狙いです。

飲酒基準改定を受けて、法律で定められた基準以外に独自の社内規定を設けている企業も存在します。「呼気中のアルコール濃度数値の基準を「0.09mg/ℓ」以下に定める」「業務前に飲酒禁止期間を設ける」など、自主的なアルコール規制強化によって、各社が飲酒に対する危機意識を高めています。

まとめ

公共交通事業業界では、命に関わる事故が定期的に発生しています。事故の原因は様々ですが、飲酒による運転が大きな要因となることは間違いありません。

飲酒運転撲滅のためには、法律の厳罰化と共に業務に従事する一人ひとりの飲酒に対する危機意識が重要です。安全で安心な運行のためには、正しい知識と見識を身につけていなければなりません。

BACK TO LIST

KEYWORD キーワード