2025.02.28
危機管理
ながら運転とは?運転中に携帯電話を持っただけでもダメ?

一般的に「ながら運転」というとスマートフォンや携帯電話等を使用しながら運転することを想像する人が多い思いますが、実際には「ながら運転」と「ながらスマホ運転」と呼ばれるものがあり、それぞれ根拠とする条文や対象とする行為が異なります。
「ながら運転」、特に「ながらスマホ運転」(携帯電話使用)といわれているのは、車の運転中に携帯電話やスマートフォン等の画像を注視し、または操作し、通話をしながら運転する行為です(以下携帯電話等使用運転を「ながらスマホ運転」と表記します)。
しかし、スマートフォンの操作だけでなく、表示された画像やカーナビの画像を注視することも違反の対象になることをご存じでしょうか?
「画面を注視する行為」というのはどういうことなのでしょうか?
運転中に何かをしながら運転するという広い意味での「ながら運転」は、どこまでが違反なのか分からない人もいると思います。
そこで今回の記事では、「ながらスマホ運転」とはどのような行為を指すのか?また「ながら運転」の罰則や、事故件数について解説していきます。
目次
「ながらスマホ運転」とは?
ながらスマホ運転は、運転者の遵守事項として、道路交通法(第71条第5号の5)により禁止されています。主に、携帯電話等を手に持ち通話したり、表示された画像を注視しながら運転することです。
【運転者の遵守事項】 道路交通法第七十一条 五の五 自動車、原動機付自転車又は自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。第百十八条第一項第四号において「無線通話装置」という。)を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。同号において同じ。)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(道路運送車両法第四十一条第一項第十六号若しくは第十七号又は第四十四条第十一号に規定する装置であるものを除く。第百十八条第一項第四号において同じ。)に表示された画像を注視しないこと。 引用:道路交通法 | e-Gov法令検索 |
政府広報オンラインによると、次の行為は「ながらスマホ運転」の対象となり、罰則が適用されます。
- ●携帯電話を持って通話しながら、車両を運転する(通話)
- ●携帯電話の画面を注視しながら、車両を運転する(画像注視)
- ●カーナビの画面を注視しながら、車両を運転する(画像注視)
携帯電話等を手に持って利用することはもちろん、カーナビ等の画面を注視しながら運転すると、「ながらスマホ運転」の対象になります。
これらの行為は「ながらスマホ運転」なのか?
こちらでは、次の行為に対して「ながらスマホ運転」の違反対象になるのか、それともならないのかについて解説していきます。
- ●車の運転中に携帯電話を持っているだけ
- ●食事をしながら車を運転する
運転中は携帯電話を持っただけでも違反?
車の運転中、携帯電話を持っただけでは違反にはなりません。違反になるのは携帯電話やスマートフォンなどを手に持って通話したり、スマートフォンやカーナビなどの画像を注視する行為をすることです。
通話する行為について、スマートフォン「など」としているのは、例えばハンディタイプの無線機を手に持って通話している場合なども違反になります。また、画像注視についてもスマートフォンやカーナビは例示であり、もちろん携帯電話のメールや画像、ビデオカメラ等の画像や画面を見る行為は禁止です。
運転中にスマートフォンや携帯電話などを手に持っていると、警察官から使用しているとして追及される可能性があるので鞄などにしまっておきましょう。
運転中の食事も「ながら運転」の対象?
道路交通法第71条第5の5に規定する「運転中のスマホ等の禁止」規定には抵触しません。
しかしながら、道路交通法第70条の「安全運転の義務」に関する規定に抵触する可能性があります。
なぜならば、道路交通法第70条では、「車両等の運転者に対して、ハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。」と安全運転の義務が課せられているからです。
運転中に、食事をするという行為の場合、ハンドルは片手で操作するとか、中には両肘でハンドル操作を行っているような状態の人も見かけます。このような運転は、運転の精度が落ちたり、食事に気を取られて、前方注視を欠いたり、運転操作を誤る可能性もあります。
この行為によって、具体的な危険を生じさせると罰則が適用されることがあります。
職業ドライバーの場合、忙しさから車の運転中におにぎりやサンドイッチなどを食べて、食事を済ませる人も多いと思います。食事をする際は、安全のために、車の運転中ではなく一旦停止するなどしてすませましょう。
「ながらスマホ運転」の罰則
「ながらスマホ運転」の罰則は、2通りあります。
1つは「ながらスマホ運転」をした場合で具体的な危険を生じていない場合の罰則。
もう1つは「ながらスマホ運転」が原因で事故を起こしたり他人に危険を生じさせた場合の罰則です。
携帯電話等を保持して通話したり画像注視したりした場合(保持)
「ながらスマホ運転」による交通事故の傾向
「ながらスマホ運転」による交通事故(死亡・重傷事故件数)は、年々増加傾向にあります。こちらでは、事故件数の推移から、「ながらスマホ運転」をしたときの危険性について解説していきます。
「ながらスマホ運転」による交通事故は年々増加している
警察庁のデータ「携帯電話等使用による死亡・重傷事故件数の推移」によると、令和3年以降「ながらスマホ運転」による死亡・重傷事故件数は年々増えています。
(注)・第一当事者が(乗用車、貨物車、特殊車)の件数である。
・携帯電話・スマートフォンの使用が原因となって発生した事故を集計した。
※この数字は第一当事者、つまり事故過失の大きい割合が自動車だった場合の統計データです。
参考:やめよう!運転中のスマートフォン・携帯電話等使用|警察庁Webサイト
令和2年に「ながらスマホ運転」の事故件数は大幅に減少しました。このことには2つの理由が絞殺できます。
- ●令和元年12月に「ながらスマホ運転」の罰則が強化された
- ●新型コロナウイルスの流行による外出規制があった
「ながらスマホ運転」は、令和元年12月に道路交通法が改正され罰則が強化されました。また、それと重なるようにして令和2年1月ころから、新型コロナウイルスが流行して外出が自粛されたため、令和2年の「ながら運転」の事故件数が減少したと考察できます。
しかし、令和5年には罰則が強化される前の数字よりも、事故件数が増加しました。そのため「ながら運転」の死亡・重傷事故は、最も高い割合を更新し続けています。
携帯電話等使用は事故の確率が3.8倍に!
警察庁の最新のデータによると「ながらスマホ運転」した場合と、していない場合の死亡事故率は比較すると、ながらスマホ運転をした場合には3.8倍も高くなっています。
(注)・第1当事者が自動車(乗用車、貨物車、特殊車)の事故に占める死亡事故の割合(死亡事故率)について、携帯電話・スマートフォンの使用が要因となって発生した事故とそれ以外の事故を比較したもの。
参考:やめよう!運転中のスマートフォン・携帯電話等使用|警察庁Webサイト
現在、スマートフォンは生活必需品とも言えるくらい、手放せないものになりました。しかし、だからといってスマートフォンで通話したり、画像注視しながらの運転は大変危険です。
車は走る凶器、鉄のかたまりです。「ながらスマホ運転」は、ドライバーはもちろんのこと、周囲の車や歩行者などに、危険を及ぼす行為であると強く認識する必要があります。
運転中に仕事の電話をしたいときはどうすれば良い?
職業ドライバーの場合、車の運転中に仕事の連絡が来ることは、よくあることだと思います。
ベストは車を停めてからスマートフォンを操作
運転中に通話したり、スマートフォンを操作したりしたいときは、やはり安全な場所に車を停めてからスマートフォンを操作するのがベストです。
警察庁のデータによると、時速60kmで運転した場合、わずか2秒で車は33.3メートル進むということです。
参考:やめよう!運転中のスマートフォン・携帯電話等使用|警察庁Webサイト
たとえば前方車両が急に止まると、たった2秒でもスマートフォンに気を取られただけで、追突事故を起こす可能性があります。
そのため少しの操作でも、スマートフォンを触る場合は車を停めてからの方が安全です。
通話ならハンズフリーでOKなのか?
「仕事で通話するだけなら、ハンズフリーでOKじゃないか?」と、思う人もいるでしょう。ハンズフリー装置を使用した場合は、「ながらスマホ運転」違反とならないでしょう。ただしハンズフリー装置であっても、自動着信機能にしていればスマホやハンズフリー装置を操作することはないですが、受話ボタンを操作する行為を伴う場合には手に持って通話、画像注視などに抵触する可能性もありますので、自動着信にしておくことが必要です。
また、ハンズフリー通話であっても会話に気を取られて、前方に対する注意を欠き漫然運転から事故につながるリスクもあるので注意が必要です。
海外の事例になりますがイギリスやオーストラリア、アメリカの一部の州では、運転中のハンズフリー通話が禁止されています。これは、漫然運転から事故に繋がる危険性を考慮したものです。
事故に繋がるリスクを考えるとハンズフリーではなく、車を停めてから通話するのが安全です。
自転車も「ながらスマホ運転」の対象になるのか?
自転車も令和6年11月より、「ながらスマホ運転」の罰則が強化されました。
自転車の「ながらスマホ運転」の罰則は次の通りです。
参考:2024年11月自転車の「ながらスマホ」が罰則強化!「酒気帯び運転」は新たに罰則対象に! | 政府広報オンライン
自転車に違反点数や反則金は存在しませんが、罰則は自動車と同等です。ちなみに「傘さし運転」も罰則の対象で、5万円以下の罰金等が課せられます。
まとめ
運転中にスマートフォンを操作し通話したり、カーナビの画面を注視したりすると「ながらスマホ運転」となり、罰則の対象です。
以上説明したように「ながらスマホ運転」をすると、事故を起こす確率が高くなります。必ず安全な場所に停車してから、スマートフォン等での通話や操作をしてください。