2024.09.30

飲酒対策

飲酒運転はいつから厳しくなった?酒気帯び運転が厳罰化されたきっかけ、昔の基準

飲酒運転をすると、厳しい刑罰が待っています。少量でも飲酒して運転したら、一発で免許停止や免許取消の対象となり、酒酔い運転をすると3年以下の懲役・または50万円以下の罰金です。
 
今でこそ飲酒運転に対する罰則は厳しいですが、実は昭和や平成初期までは、それほど飲酒運転に対する罰則が厳しくなかったことをご存知でしょうか?
 
この記事では、飲酒運転の罰則の歴史を紹介し、酒酔い運転や酒気帯び運転が厳罰化されるきっかけになった事故についても解説していきます。

目次

飲酒運転の罰則は1970年に誕生

道路交通法の整備が進められたのは1960年で、飲酒運転に関する罰則が設けられたのは1970年でした。当時の罰則は以下の通りです。
 

違反種別 罰則 違反点数
酒酔い運転 2年以下の懲役
または10万円以下の罰金
15点
酒気帯び運転
呼気中アルコール濃度0.25mg/l以上
3ヶ月の懲役
または5万円以下の罰金
6点
 
現在は、呼気1リットル当たりアルコール濃度0.15mg以上だと酒気帯び運転の対象ですが、この時代は0.25mg以上から罰則となっていました。
 
当時の実験によれば、呼気1リットルに対し0.25mg以上から影響が出るとの結果が出たためです。 また、道路交通法が施行される前は、飲酒運転に対しての罰則はありませんでした。

飲酒運転が厳罰化されたのは2002年

飲酒運転に対する、罰則が厳しくなったのは2002年です。1990年代になると悪質な飲酒運転が増加し、厳罰化をめぐる議論が国会で交わされました。この年から、呼気1リットルに対し、0.15mg以上を罰則とする変更があります。
 
酒気帯び運転と酒酔い運転の罰則については、下の表を参考にしてください。 
 

違反種別 罰則 違反点数
酒酔い運転 3年以下の懲役
または50万円以下の罰金
25点
酒気帯び運転
呼気中アルコール濃度0.25mg/l以上
1ヶ月以下の懲役
または30万円以下の罰金
13点
酒気帯び運転
呼気中アルコール濃度0.15mg/l以上0.25mg/l未満
 
1ヶ月以下の懲役
または30万円以下の罰金
6点
 
 

2002年になって、呼気1リットル当たりアルコール濃度0.15mg以上を罰則とする変更がありました。また、罰則も違反点数も厳しくなっています。 

1990年代から悪質な飲酒運転が増加し、後述で紹介する事件の影響で2002年から飲酒運転が厳罰化されました。

2007年、2009年で厳罰化がさらに進む

2002年に飲酒運転が厳罰化された影響で、2001年に2,994件あった飲酒運転の重傷事故が、5年後の2006年には1,315件と半分以下に減少しています。
参考:第2節 飲酒運転による交通事故の状況|内閣府
 
そして、2007年には罰則がさらに厳しくなり、2009年には違反点数が厳罰化されました。
 
【2007年】

違反種別 罰則 違反点数
酒酔い運転 5年以下の懲役
または100万円以下の罰金
25点
酒気帯び運転
呼気中アルコール濃度0.25mg/l以上
3年以下の懲役
または50万円以下の罰金
13点
酒気帯び運転
呼気中アルコール濃度0.15mg/l以上0.25mg/l未満
同上 6点
 
【2009年以降】
違反種別 罰則 違反点数
酒酔い運転 5年以下の懲役
または100万円以下の罰金
35点
酒気帯び運転
呼気中アルコール濃度0.25mg/l以上
3年以下の懲役
または50万円以下の罰金
25点
酒気帯び運転
呼気中アルコール濃度0.15mg/l以上0.25mg/l未満
同上 13点
 
この頃からドライバーが飲酒運転をしている場合、同乗者も罰則の対象となりました。飲酒していると知りながら運転をさせたり、車を運転すると知りながら酒を提供したりすると罰則の対象です。

【飲酒運転車両への同乗禁止の刑事処分】
内容 罰則
運転者が酩酊状態であることを知りながら、酒酔い運転の車両に同乗した場合 3年以下の懲役
または50万円以下の罰金
運転者が酒気帯び運転であることを知りながら、該当車両に同乗した場合 2年以下の懲役
または30万円以下の罰金

飲酒運転が厳しくなったきっかけの事故

飲酒運転の厳罰化は2002年、そして2007年以降進みました。飲酒運転の厳罰化が進んだきっかけになった、と言われている事件が2つあります。それが「東名高速飲酒運転事故(1999年)」と「福岡・海の中道大橋飲酒運転事故(2006年)」です。

東名高速飲酒運転事故(1999年)

2002年に飲酒運転が大幅に厳罰化されましたが、その大きなきっかけになったと言われるのが「東名高速飲酒運転事故」です。
 
【東名高速飲酒運転事故】

発生日時 1999年(平成11年)11月28日
場所 東京都世田谷区の東名高速道路東京IC付近
加害者 12トンのトラックドライバー
被害 3歳と1歳の子供が死亡
刑事罰で懲役4年
民事訴訟で総額2億5千万円の賠償金支払い
 
飲酒運転していたトラックドライバーが、4人乗り(夫婦、子供2人)の普通自動車に追突した事故です。
 
トラックが追突したことで被害者の車両は炎上し、夫婦は何とか自力で脱出しましたが、残された3歳と1歳の子供が焼死するという痛ましい事故でした。
 
加害者のトラックドライバーはウイスキーとチューハイを飲んでおり、酩酊状態のまま運転していたとのことです。
 
この事故は当時大きく取り上げられ、刑事訴訟で懲役4年が決定しています。また民事訴訟では、総額2億5千万円の賠償金を支払う判決が下されました。

福岡・海の中道大橋飲酒運転事故(2006年)

2002年に飲酒運転が厳罰化され、飲酒運転による重傷事故や死亡事故は減少傾向でした。しかし、2006年にも痛ましい事故が発生しています。それが「福岡・海の中道大橋飲酒運転事故」です。この事件は、2007年に飲酒運転が厳罰化される大きな要因となりました。
 
【福岡・海の中道大橋飲酒運転事故】

発生日時 2006年(平成18年)8月25日
場所 福岡市東区の海の中道大橋
加害者 福岡市職員の普通自動車
被害 運転手の夫と助手席の妻は軽傷、子供3人が死亡
刑事罰で懲役20年
(危険運転致死傷罪と道路交通法違反を併合)
 
家族5人が乗る乗用車に、当時22歳で飲酒した福岡市職員(男)の車が追突。被害者の車が橋から海に転落して、夫婦は軽症で済んだものの、子供3人が水死するという痛ましい事故でした。
 
加害者の男には懲役20年の刑罰、さらに民事裁判で被害者家族が損害賠償3億5千万円を求めています。最終的に加害者が謝罪し、和解という結果に終わりました。この事件は加害者以外にも、当時の福岡市長が10ヶ月分の給与20%減額を発表しています。

減少傾向だが飲酒運転は現在でも起きている

飲酒運転の厳罰化が推進され、2002年以前と比較すると、飲酒運転による事故は大きく減少しています。飲酒運転による事故の推移は、以下の通りです。
 

年数 重傷事故の件数 死亡事故の件数
2001年 2,994件 1,191件
2011年 596件 270件
2021年 288件 152件
参考:第2節 飲酒運転による交通事故の状況|内閣府
 
20年間で、飲酒運転による重傷事故の件数は10分の1以下に減っており、厳罰化の効果は大きいと言えます。
 
しかし、未だに重傷事故も死亡事故も0件になることはありません。飲酒運転は、被害者にとっても加害者にとっても、その後の人生に大きな影を落とします。
 
少量でも飲酒したら、運転に対する判断能力を鈍らせると言われています。「自分はお酒に強いから大丈夫。」と過信せず、〝飲んだら乗るな、乗るなら飲むな〟の精神を強く持ってください。

まとめ

飲酒運転の厳罰化により、事故の件数は年々減少傾向にあります。しかし、飲酒運転による事故は未だになくなりません。飲酒運転で事故を起こすと、取り返しのつかない事態になります。自分の人生も相手の人生も大きく狂わせるので、飲酒したら安易に運転をするのはやめましょう。

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