2024.06.30
危機管理
トラックのあおり運転|加害者・被害者になる事例や必要な予防・対処法
「あおり運転」は現代の重大な社会問題の一つです。近年発生した重大な死傷事故の中には、あおり運転が原因となった事例も数多く存在します。誰しもが加害者・被害者になる可能性がある、あおり運転。
この記事では、トラックの運転中にあおり運転の加害者・被害者になってしまった場合を想定し、具体的な予防策や対処法を解説します。
目次
トラックであおり運転加害者になった際に生じる5つのリスク
あおり運転の加害者になってしまった場合には、様々なリスクが生じます。想定される主な内容をまとめました。
①警察に逮捕される可能性がある
あおり運転は、道路交通法の「妨害運転罪」に該当する犯罪行為です。妨害運転には対象となる10類型の違反が定義されており、違反が認められた場合には逮捕・検挙対象となります。
逮捕に至る経緯は様々ですが、主にあおり運転を犯した現場で現行犯逮捕される場合や、通報などにより後日逮捕される場合が多いでしょう。
②有罪になると罰則を科せられる
逮捕後に有罪が確定した際には、然るべき罰則が科せられます。妨害運転における罰則や行政処分は以下の通りです。
あおり運転に対する罰則と行政処分 | |
①妨害運転(交通の危険のおそれ)
・他の車両の通行を妨げる目的の妨害行為であり、他の車両等に交通の危険を生じさせるおそれのあるもの |
|
罰則 | 行政処分 |
3年以下の懲役または50万円以下の罰金 | 違反点数25点、免許取り消し(欠格期間2年) |
②妨害運転(著しい交通の危険)
①の罪を犯し、高速自動車国道等において他の車両を停止させ、道路における著しい交通の危険を生じさせた場合 |
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罰則 | 行政処分 |
5年以下の懲役または100万円以下の罰金 | 違反点数35点、免許取り消し(欠格期間3年) |
また、あおり運転が原因で人を死傷させた場合には、さらなる罰則(危険運転致死傷罪など)が科せられる可能性があります。
〈参考〉警察庁 危険!「あおり運転」はやめましょう
STOP! あおり運転!!
③民事責任(損害賠償)が生じる場合がある
あおり運転の加害者になってしまった際には、刑事責任や行政処分以外に民事責任を問われる可能性があります。
民事責任とは損害賠償を指しています。あおり運転により死傷事故や物損事故を起こした際には、被害者に対して医療費用や修理費用を賠償しなければなりません。また、精神的苦痛などを理由に、慰謝料を請求される可能性もあるでしょう。
④懲戒処分や退学リスクに晒される
あおり運転により逮捕・拘留・有罪判決が下された場合には、仕事や学校、日常生活に支障をきたします。状況次第では、職場や学校などにあおり運転の事実が発覚してしまうかもしれません。
逮捕され有罪判決を受けて前科がついた場合には、懲戒処分や退学処分など、厳しい処分が下される可能性もあります。
⑤SNSなどで制裁を受ける可能性がある
情報の漏洩は、身近な環境が原因とは限りません。情報化社会である現代では、SNSなどを介して、事故や事件の情報や加害者の個人情報はあっという間に漏洩します。
加害者として関わったあおり運転の情報がSNS上に漏洩すれば、個人の特定や誹謗中傷、名誉毀損など、様々な被害に晒されるリスクが生じます。
トラックでもあおり運転の被害者になる!
あおり運転の被害リスクに、車両の区別はありません。トラックなどの大型車両が、あおり運転の被害にあった事例も数多く存在します。主な理由をまとめました。
法律や社内規定(速度制限など)による被害
中・大型トラックの、高速道路における法定最高速度は時速90kmです。大型トラックには速度制限装置(スピードリミッター)の装着が義務付けられており、法定速度を超える走行ができない構造になっています。
また、会社独自の「社速」を設定している物流業者や運送会社も存在します。トラックのドライバーは、法定速度や社速に準じた運転を求められます。
対して、普通自動車の高速道路における法定最高速度は時速100kmです。普通自動車と大型トラックの速度制限の差が運転手のストレスを生み、あおり運転の原因となります。
認識不足や勘違いによる被害
上述の通り、大型トラックの最高速度は法律や社内規定により制限されています。しかし、すべてのドライバーが大型トラックに関わる法律を認識しているわけではありません。
大型トラックの運転事情を把握していないドライバーの中には、速度も上げず追い越しも行わない運転に対して不満を露わにする者も存在します。
また、トラックドライバー側にそのようなつもりがなくても、あおり運転の被害にあった(車間距離の近さなどから)と勘違いしてしまう一般ドライバーもいるようです。
あおり運転の対策:加害者にならないための予防方法
あおり運転の加害者や被害者にならないためには、効果的な予防方法や対処方法を知っておく必要があります。代表的な対策を確認しましょう。
感情のコントロール
イライラや腹立たしさが引き金になりやすいあおり運転。運転中にイライラを感じた際には、深呼吸や家族のことを思い浮かべるなど、感情のコントロールに努めましょう。道を変えるなど、イライラの対象となる車両から距離を取る方法も有効です。
十分な車間距離
周囲の車両と十分な車間距離を取るように心がけましょう。物理的に距離を取ることで、運転中の様々なトラブルに余裕を持って対処することができます。
体と心の健康を保つ
バランスのとれた食事や十分な睡眠、適度な運動などを意識し、体の健康を保ちましょう。肉体が健康であれば、精神にもゆとりが生まれます。思考のコントロールや、抑制が効きやすい状態を維持する努力が必要です。
あおり運転の対策:被害に遭った際の対処方法
もしもあおり運転の被害にあってしまった場合には、なんらかの対処が必要です。効果的な方法をまとめました。
相手にしない
あおり運転の加害者は感情的になっています。こちらからのリアクションは、相手の感情を逆撫でしてしまう可能性を孕んでいます。できるだけ相手にせず、冷静にやり過ごしましょう。
トラックから降りない
進路を妨害されたなど、やむを得ず停車した場合には絶対に車両から降りてはいけません。ドアや窓ガラスをロックし、あおり運転加害者との物理的接触を回避してください。
警察に通報
少しでも身の危険や恐怖を感じた際には、すぐに警察へ連絡しましょう。余裕があれば、相手の車両ナンバーなどを控えておくと良いでしょう。
ドライブレコーダーの設置
車内に設置できる音声・映像記録装置(ドライブレコーダー)の使用もおすすめです。あおり運転の経緯や加害者とのやりとりなど、一部始終を記録として録画することができます。
まとめ
トラックのあおり運転は、業界で働くドライバーにとって深刻な問題の一つです。加害者・被害者にならないためには、日常的な安全運転を心がけなければなりません。