2024.04.30
飲酒対策
飲酒運転加害者に対する保険の有無は?補償内容や適用範囲を解説
飲酒運転発生時には、様々な保険が適用可能です。自動車保険の多くは飲酒運転被害者を対象としていますが、加害者を補償対象とした保険がないわけではありません。
この記事では、飲酒運転加害者に対する保険の内容や範囲を知りたい方へ向け、飲酒運転加害者が利用できる保険について解説します。
目次
自動車保険の種類や補償範囲
自動車事故に適用される保険の種類は、2種類に分けられています。
保険の種類 | 強制保険(自賠責保険) |
内容 | 自動車損害賠償補償法によって加入が義務化されている保険 |
補償範囲 | 歩行者や同乗者、他車の搭乗者など、運転者以外の人に対する損害を補償する |
保険の種類 | 任意保険(対人賠償・対物賠償保険など) |
内容 | 自由意志によって加入の有無を判断できる保険 |
補償範囲 | 運転者本人や、被害者、人や物など、様々な損害を補償する |
飲酒運転では運転者本人に対する補償は制限される
飲酒運転が発生した場合、被害者側は一般的な事故と同様の自動車保険補償を受けられます。ただし、飲酒運転を起こした加害者の事情は異なります。
飲酒運転加害者は、基本的に自分自身に対する補償(自分自身の傷害や車両の物損など)を受けられません。
※被害者に対する各種保険は適用可能
飲酒運転加害者になった場合に適用される主な保険
飲酒運転事故の加害者になった場合、加害者本人に適用される保険の具体的内容を確認します。
①自賠責保険(強制保険)
交通事故の被害者保護を第一目的とした自賠責保険は、飲酒の有無に関わらず適用可能です。ただし、上述の通り、保険の補償対象は飲酒運転の被害者に限定されます。
②対人賠償保険(任意保険)
被害者を死傷させ、自賠責保険で支払われる金額ではまかないきれない金額の損害に対して支払われる保険です。
③対物賠償保険(任意保険)
被害者の車両など、物に対する損害を対象とした保険です。飲酒運転によって損害賠償が発生した場合に適用されます。
飲酒運転加害者になった場合に適用されない主な保険
飲酒運転事故の加害者になった場合、保険の対象範囲は制限されます。適用されない保険についても確認しておきましょう。
①人身傷害保険
交通事故により怪我などを負った場合に、治療費や休業期間中の収入などを補償する保険です。飲酒運転の当事者として事故の加害者になった際には、適用されません。
②搭乗者傷害保険
同一車両に乗り合わせている者(運転者含む)が、交通事故により怪我を負った際に、損害を補償するための保険です。こちらも、飲酒運転の加害者事故の際には適用されません。
③無保険車傷害保険
交通事故の相手が保険未加入者であった場合、相手側からの損害賠償が十分に期待できない事例があります。
無保険車傷害保険は、自賠責保険などでは保証しきれなかった金額が保証対象となります。ただし、保証対象者が飲酒運転であった場合には、保険は適用されません。
④自損事故保険
ガードレールや電信柱への衝突事故や、路肩への転落事故などを起こした際に、運転者や同乗者の死傷や傷害に対して支払われる保険です。
飲酒運転による自損事故の場合には、運転者本人は保険の適用外(本人以外は保険の適用内)となります。
⑤車両保険
偶然の事故(自然災害や落下物、火災など)により、車両が損害を被った際に適用される保険です。運転者の飲酒が発覚した場合には、保険適用外となる事例が多いでしょう。
任意保険の適用有無について
法律により加入が義務付けられている強制保険(自賠責保険)は、適用の有無や補償範囲は一律です。対して、任意保険の種類や内容、適用有無や補償範囲は、各保険会社によって異なる場合があります。
各保険会社には、「約款(やっかん)」と呼ばれる不特定多数との取引を前提とした規則や条項が定められています。
各保険会社の約款は独自の内容であり、車両に関わる約款では「自動車保険普通保険約款」などの名称で規則や条項が記載されています。任意保険の内容や補償範囲は約款に従い適用されますので、同一名称の保険であっても、保険会社により内容が異なる場合があるのです。
任意保険の内容や適用範囲の詳細に関しては、保険加入の際に内容を確認する必要があります。気になる場合には、保険会社や代理店に問い合わせてみましょう。
飲酒運転の罰則や行政処分
飲酒運転の厳罰化は年々加速しています。現在では、運転者だけでなく関係者にも罰則や行政処分が下されます。
飲酒運転の罰則内容
罰則の対象者 | 罰則内容 |
車両のドライバー本人 | ・酒酔い運転 五年以下の懲役または百万円以下の罰金 ・酒気帯び運転 三年以下の懲役または五十万円以下の罰金 |
車両を提供(貸し出すなど)した人物 | ・ドライバーが酒酔い運転をした 五年以下の懲役または百万円以下の罰金 ・ドライバーが酒気帯び運転をした 三年以下の懲役または五十万円以下の罰金 |
酒類を提供(店舗スタッフなど)した人物や車両に同乗した人物 | ・ドライバーが酒酔い運転をした 三年以下の懲役または五十万円以下の罰金 ・ドライバーが酒気帯び運転をした 二年以下の懲役または三十万円以下の罰金 |
飲酒運転の行政処分
飲酒運転の種類 | 違反点数 | 行政処分内容 | |
酒気帯び運転 | 0.15mg以上0.25mg未満 | 十三点 | 最低九十日間の免許停止処分(累積点数や前歴がない場合) |
0.25mg以上 | 二十五点 | 免許取り消し+最低二年間の欠格期間累積点数や前歴がない場合) | |
酒酔い運転 | 三十五点 | 免許取り消し+最低三年間の欠格期間累積点数や前歴がない場合) |
上述した罰則や行政処分は、飲酒運転が発覚した際の刑罰内容です。飲酒運転による重大な事故や事件を引き起こした際には、さらに刑罰が科せられる(危険運転致死傷罪など)ことになります。
〈参考〉警察庁 みんなで守る「飲酒運転を絶対しない、させない」
まとめ
飲酒運転による事故を引き起こした際には、様々な車両保険が適用されます。ただし、事件や事故の加害者に対する保険の適用有無や、補償範囲には制限がかかる事実に留意が必要です。
今後もさらなる厳罰化が予想される飲酒運転。飲酒運転は法律違反である事実を認識し、飲酒時には車両の運転や同乗、提供の禁止を徹底しなければなりません。