2021.11.26
飲酒対策
社員が酒気帯び運転事故を起こしたら|想定される事態と防止対策とは
目次
飲酒による運転は法律違反です。飲酒事故は重大な社会問題の一つであり、現在では厳しい罰則が定められています。しかし、定期的に飲酒運転による事故が起こっていることも事実であり、依然として積極的な対策が必要です。
ここでは、日常的に車両の運転に従事する企業社員が酒気帯び運転を起こした場合を想定し、起こりうる事態と具体的な防止対策ついて解説します。
酒気帯び運転の基礎知識
飲酒運転とは酒を飲んだ状態で車を運転する行為であり、「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2種類が存在します。一般的に混同されがちな2つの飲酒運転ですが、明確な違いがあります。
【酒気帯び運転】
呼気に含まれるアルコール濃度が、1リットルあたり0.15mg~0.25mg以上含まれている状態で車両等を運転すること
【酒酔い運転】
呼気中のアルコール濃度に関わらず、自力での運転が困難と思われるほど酒に酔った状態で車両等の運転をすること。呼気中のアルコールの濃度が酒気帯び運転に該当する範囲内やそれ以下であっても、酒酔い運転に該当する場合もある
厳罰化の経緯と現状
道路交通法において飲酒運転に罰則が課せられたのは1970年であり、以降は飲酒運転の増加に伴い厳罰強化を目的とした法改正を経て現在に至っています。
内閣府が発表している平成29年度の道路交通法違反の取締り件数はおよそ650万件で、酒酔い・酒気帯び運転違反件数は2万7,195件となっています。
〈参考〉
社員が酒気帯び運転を起こしたら
社員が酒気帯び運転を犯した場合、責任が問われるのは違反を犯した運転者本人のみとは限りません。本人以外にも所属する会社や責任者、状況次第では当事者の飲酒に関わった者にも責任が及び、具体的な処分内容は状況によって異なります。酒気帯び運転を引き起こした際の法的罰則をまとめました。
運転者に対する処分
アルコール濃度 |
違反点数 |
行政処分 |
罰則 |
呼気1リットルにつき0.15mg以上0.25mg未満 |
13点 |
免許停止(90日間) |
3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
呼気1リットルにつき0.25mg以上 |
25点 |
免許取り消し(欠格期間2年) |
3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
上述の内容は基準としての処分であり、酒気帯び以外にも道路交通法に抵触する行為(スピード違反など)があった場合には処分が加算される可能性があります。また、飲酒運転によって人身事故を起こした際には、より重い罰則が課せられます。
過失運転致死傷罪 |
7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金 |
危険運転致死傷罪 |
アルコールにより正常な運転ができない状態での人身事故 |
死亡事故:1年以上20年以下の懲役 負傷事故:15年以下の懲役 |
|
アルコールにより正常な運転ができないおそれのある状態での人身事故 |
死亡事故:15年以下の懲役
負傷事故:12年以下の懲役 |
事業者に対する処分
所属の運転者が飲酒運転を起こした場合 |
初違反 100日車(車両使用停止) 再違反 200日車(車両使用停止) |
さらに、指導監督義務違反や飲酒を容認するような事実が発覚した場合には、事業者に対して以下の処分が執行されます。
事業者が飲酒運転を下命・容認した場合 |
14日間の事業停止(対象:違反営業所) |
飲酒運転に伴う重大事故を起こし、事業者が飲酒運転に関する指導監督義務に違反した場合 |
7日間の事業停止(対象:違反営業所) |
事業者が飲酒運転に関する指導監督義務に違反した場合 |
3日間の事業停止(対象:違反営業所) |
関係者に対する処分
車両提供者
運転者が飲酒済みであることを知りながら車両を提供した者
運転者が酒気帯び運転をした場合 |
3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
酒類の提供者及び車両の同乗者
運転者と知りながらアルコールを提供した者、運転者が飲酒済みと知りながら車両に同乗した者
運転者が酒気帯び運転をした場合 |
2年以下の懲役または30万円以下の罰金 |
〈参考〉
公益社団法人 全日本トラック協会 飲酒運転防止対策マニュアル
酒気帯び運転が事業者に及ぼす損害
社員が酒気帯び運転を起こした場合、起業者は上述のような法的処罰を受ける可能性がありますが、酒気帯び運転が事業者及び経営する会社に及ぼす影響は法的罰則のみとは限りません。
社会的信用の低下はその最たる例といっても過言ではないでしょう。インターネットやSNSが発達した現代では、飲酒による交通事故や人身事故の発生情報は積極的に拡散され、多くの人が事実関係を共有することができます。
また、国土交通省では過去の行政処分等を検索・閲覧することができる「ネガティブ情報等検索サイト」を公開しており、行政処分の状況は誰でも確認可能です。
飲酒運転の事実や事故の実態、ずさんな経営状況が公開されることで企業イメージは失墜し、最終的には経営破綻に繋がる可能性もあるでしょう。
〈参考〉
事業者が行うべき酒気帯び運転の防止対策
上述のように、酒気帯び運転は運転者本人ばかりではなく企業や関係者にも多大な影響を及ぼします。酒気帯び運転を防止するためには事業者及び企業としての徹底した防止対策の実践が必要不可欠です。以下に飲酒運転撲滅のために効果的な対策を記載します。
現場や社内の管理システムを徹底する
確実な点呼
酒気帯びの有無は確認必須項目となっています。ですが、実際には自動車運送事業における輸送安全確保違反の多くは点呼関連の業務で発生しています。
確実な点呼執行は酒気帯び運転撲滅にも繋がる極めて重要な業務です。高性能のアルコール検知器や、社員の負担を軽減し業務を円滑に行うためのIT点呼などを積極的に取り入れ、厳正な点呼を実施する必要があります。
IT点呼については、以下の記事で詳細を解説しています。
参考:SAFETY LIFE MEDIA「自動車運送事業における『IT点呼』とは?概要や導入方法を解説」
飲酒実態の調査
社員の日常的な飲酒実態を把握しておくことも重要です。定期的な面談や健康診断の受診、勤務時間以外の運転状況の調査など、運転者の飲酒実態把握に努めましょう。
社内規則の強化
就業規則や労働契約書において飲酒運転の処分規定を設けることも効果的です。企業として飲酒運転に対する徹底した対処姿勢を明確にし実行することで、社員の飲酒防止意識を高く保つことができます。
社員に対する意識づけ
教育と指導
社内における飲酒運転防止教育や勉強会を定期的に実施するのも良い対策です。社員一人ひとりに正しい飲酒運転防止知識を浸透させることで、会社全体の飲酒運転防止意識の向上を期待することができます。
外部の専門機関を利用する
国や地方自治体が主宰する飲酒運転撲滅イベントや、飲酒運転防止対策に取り組む非営利団体の活動に参加する方法も有用な選択肢です。社員の立場に合わせた研修やプログラムなどを受講し、飲酒運転の理解を深める事ができれば飲酒防止に役立つでしょう。
飲酒運転撲滅のためには、運転者自身の意識と共に事業者及び企業全体の防止意識が必要不可欠です。飲酒運転は自分や他人の命を奪ってしまう可能性があることを肝に銘じ、法律の遵守を徹底した上で日々の業務を遂行しなければなりません。