2023.08.29

危機管理

安全運転義務違反とは?運転者に課せられる義務を徹底解説!

自動車を運転するすべての者に課せられる「安全運転義務」。適切な運転及び、判断義務を怠った場合、運転者には法的な罰則が課せられます。この記事では、安全運転義務違反の概要や、該当行為・罰則の内容について解説します。

目次

安全運転義務違反とは

道路交通法70条「安全運転の義務」には、自動車の運転者が遵守しなければならない安全運転の規定が明記されています。
 

安全運転の義務

自動車の運転者は、自動車に装備されているハンドルやブレーキ、及びその他の装置を正しく操作しなければならない。また、道路や交通及び自動車等の状況に応じ、周囲の自動車や歩行者に気を配り、危害を及ぼさない速度と方法で運転する義務を負う。

道路交通法第七十条(安全運転の義務)
 
自動車の運転者には、適切な車両の操作及び状況判断が求められます。運転の誤り、周囲への注意や状況判断ミスにより事故を起こした場合には、安全運転義務違反となります。

安全運転義務違反の具体的内容

安全運転義務の範囲は広く、違反の内容は多岐に渡ります。安全運転義務違反に該当する具体的な行為は、以下の通りです。

①運転操作不適(ミス)

自動車の操作ミスです。操作不適は「アクセル」と「ブレーキ」に区分されます。具体的には、ハンドル操作の誤りや、ブレーキペダルの踏み間違いなどが該当します。高齢者運転による事故の原因として、一定の割合を占める違反です。

②前方不注意

運転中に然るべき注意を怠っている状態です。「漫然運転」と「脇見運転」に区分されます。
 

  • 漫然運転:運転行為自体には問題がないが、意識が散漫な状態の運転。運転に必要な適切な状況判断ができていない
  • 脇見運転:前方を見ていない運転。周囲の景色や車内など、物理的に前方以外を視認している

③動静不注視

他車両や歩行者などの存在を認識しているにも関わらず、注視を怠る行為です。対向車の接近を無視した運転や、強引な右折などが該当します。

④安全不確認

前後左右、後方の安全確認を行っていません。「前方・左右不確認」と「後方不確認」に区分されます。交差点進入時や車線変更時など、周囲の安全確認を怠っている行為が該当します。

⑤安全速度違反

見通しの悪い場所や、危険性の高いと思われる場所で、安全速度を超過して走行した際に適用される違反です。制限速度や法定速度を厳守していても、徐行や減速が必要な場面において必要行為を怠った場合には、違反の対象になります。

⑥予測不適

運転中の安全性確保に関する自己認識や、周囲の動き(対向車や歩行者など)に対する危険想定不足です。自分自身及び、周囲の行動に関する判断ミスは、予測不適に該当します。

安全運転義務違反の内訳

安全性義務違反に該当する行為は、運転プロセスごとに「認知」「判断」「操作」のいずれかに分類可能です。実際に起きている安全運転義務違反を確認すると、「認知」に該当する違反の割合が高くなっています。

令和2年中における安全運転義務違反の内訳

違反内容 割合 違反プロセス
安全不確認 45% 認知
脇見運転 19% 認知
動静不注視 14% 判断
漫然運転 11% 認知
運転操作不適(ミス) 9% 操作
その他の違反 3%  
 

安全不確認や脇見運転、漫然運転など、運転プロセスが「認知」に分類される違反行為は、運転における油断や気の緩みが事故に繋がりやすい事実を証明しています。
 
〈参考〉
損保保険ジャパン株式会社 Monthly Report 2022 2月号

安全運転義務違反と交通事故の関係性

年間に起きる交通事故の多くは、安全運転義務違反が原因となって発生しています。令和3年中に起きた交通死亡事故発生件数の割合を法令違反別に比較すると、安全運転義務違反による事故の量が圧倒的な割合を占めています。安全運転義務違反は、時として重大な死亡事故を引き起こす原因ともなるのです。

法令違反別交通死亡事故発生件数(令和3年)

法令違反内容 割合 件数
安全運転義務違反 53.6% 1,385件
その他の違反 12.1% 313件
歩行者妨害等 8.4% 217件
歩行者 4.5% 115件
信号無視 4.3% 111件
 
〈参考〉
内閣府 陸上交通第1部 道路交通第1章 道路交通事故の動向 第2節 令和3年中の道路交通事故の状況

安全運転義務違反の法的罰則

安全運転義務違反には、法的罰則が設けられています。一般的な安全運転義務違反(運転者の過失が軽く、被害も軽度)の場合には、「行政処罰」が下されます。

安全運転義務違反における行政処罰の内容

交通違反点数 2点
反則金 大型車 普通車 二輪車 小型特殊車・原付
12,000円 9,000円 7,000円 6,000円
 
反則金には納付期限が設けられています。長期に渡って反則金を納付しなかった場合には、刑事手続きに移行する可能性もあるでしょう。万が一、安全運転義務違反を犯した際には、速やかに行政処罰を受けなければなりません。
 
ただし、事故の過失が重い場合(死傷事故のような事例)には、現行犯逮捕される事例も珍しくありません。事故の内容に応じて、罰金や禁固刑、懲役などの刑事罰が科せられます。

安全運転義務違反の防止対策

安全運転義務を遵守するためには、自動車を運転する一人ひとりが高い意識を持つことが重要です。以下に、個人や法人ができる安全運転義務違反対策をご紹介します。

危険予知トレーニング

交通安全教育の一環で、事故防止効果のあるトレーニングです。利用者は、運転手目線の動画を視聴しながら、起こり得る出来事や潜んでいる危険を予測・分析します。
 
様々な場面や状況を想定した動画を繰り返し確認し、危険予測のポイントを身につけます。
 
危険予知トレーニングは、日本自動車連盟(JFA)や、独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)などの団体が実施しており、誰でも利用可能です。
 
〈参考〉
日本自動車連盟(JFA)危険予知・事故回避トレーニング
独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA) 危険予知トレーニングシート集 

研修や講習会の受講

企業や組織単位で安全運転義務違反対策に取り組む場合には、企業向けの研修や講習会に参加する方法も有効です。
 
座学はもちろん、現在では安全運転管理者を伴った実車教習なども実施されています。実践的な運転講習により、安全運転義務の重要性を再認識できるでしょう。

安全運転義務マニュアルの策定

安全運転義務違反に対する意識を底上げするためには、社内独自の「安全運転義務マニュアル」を策定しましょう。
 
安全運転義務に関する規定や罰則を設けることで、社員の意識向上効果を期待できます。定例会や会議などで、安全運転義務に関する社内状況を共有してください。

まとめ

安全運転義務違反は犯罪です。国内で起きる交通事故の多くは、安全運転義務違反がきっかけとなって発生しています。普段から自動車の運転に慣れていたとしても、油断は禁物です。自動車を運転する際には、安全運転を意識し、道路交通法を遵守しましょう。

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