2023.06.20

運送業界

デジタコ義務化の完全ガイド 使い方から違反対策まで解説

貨物運送事業において、運転の安全確保は最優先事項です。

法律を遵守した運転や業務の遂行を実現するための施策は様々ですが、有効な手段の一つに「デジタコ 」があります。法律により装着が義務化されているデジタコ。

この記事では、貨物運送事業において必須であるデジタコについて解説します。

目次

車両の運行記録計「デジタコ」とは

デジタコとは「デジタルタコグラフ」の略称であり、車両の内部に設置して使用するデジタル機器です。

具体的には、車両の運行に関する情報(速度や走行距離、走行時間など)を、正確に記録する運行記録計を指しています。デジタコが記録した情報は、デジタルデータとしてメモリーカードやSDカードに長期保存可能です。

従来使用されていた「アナタコ(アナログタコグラフ)」に比べ、データの記録・保存が容易であり、改ざんが難しいというメリットがあります。

〈参考〉国土交通省 自動車総合安全情報 デジタル式運行記録計の概要
 

義務化されているデジタコの装着

タコグラフ(デジタコやアナタコ)の装着は「貨物自動車運送事業法」により義務化されています。現在、タコグラフ装着が義務付けられている対象車両は以下の通りです。
 

  • ●車両総重量8t以上または最大積載量5t以上の事業用トラック
  • ●車両総重量7t以上または最大積載量4t以上の事業用トラック 
※新規車両だけでなく、使用中の車両にも装着義務があります
 
国内では、従来から運行記録計の搭載義務がありました。2015年以前までは「車両総重量8t以上または最大積載量5t以上の事業用トラック」のみに装着が義務付けられていましたが、以降は上述の範囲に拡大されています。
 
〈参考〉全日本トラック協会 運行記録計(タコグラフ)の装着義務付け対象拡大について

デジタコ義務化の流れと範囲拡大の背景

タコグラフの装着は、1967年から義務化されています。国土交通省はこれまでに数度の法律施行・改正を行っており、タコグラフの義務化範囲は徐々に拡大してきました。

デジタコ義務化範囲拡大の流れ

  • ●1962年:国内で特定の車両におけるタコグラフの装着が義務付けられる
     
  • 1967年:「車両総重量8t以上または最大積載量5t以上の事業用トラック」の装着義務化
     
  • 2015年:上述の内容に加え、「車両総重量7t以上または最大積載量4t以上の事業用トラック」を新規購入する場合に装着が義務化
     
  • 2017年:「車両総重量7t以上または最大積載量4t以上の事業用トラック」のすべて(既存車両も含む)に装着が義務化

義務化範囲拡大の背景

義務化範囲の拡大の動きは、現在でも継続中です。国土交通省がデジタコを推奨する背景には、貨物運送業界における様々な問題が関わっています。

長期労働の是正


慢性的な人材不足である貨物運送業界。長距離トラックの運転手は、長時間拘束や時間外勤務などを強いられることも珍しくありません。


心身の疲労やストレスは安全な運転に支障をきたす恐れがあり、事故のリスクも上昇します。デジタコは、運転者の労働状況を正確に記録・保存可能です。

運転者の労働環境を把握・管理することで、長期労働が蔓延している状況を是正する狙いがあります。

違反行為の可視化


貨物運送業界では、乗務時間の改善基準告示違反など、運送会社による法律違反が定期的に発生しています。

デジタコを用いた運行情報は正確です。デジタル管理された業務実態の改ざん・隠蔽は、アナログ管理に比べて難しくなります。

デジタコの導入範囲が拡大すれば、違反行為がこれまで以上に可視化されると考えられています。

デジタコの基本的な扱い方

デジタコの使用方法は、車両に装着された車載器本体にメモリー(SD)カードを挿入するだけです。メモリー(SD)カードは、業務中の情報を自動的に記録します。

車載器には、走行前や走行中、駐停車中などに応じて操作するボタン(または液晶画面)が搭載されています。

運転者自身が用途にあったボタンを押すことで、状況に応じた操作が可能です。

デジタコにできること

事業用のトラックに装着するデジタコは、国土交通省に認可を受けた製品を使用しなければなりません。

認可済みのデジタコであれば、貨物運送事業に必要な最低限の機能は備わっています。

デジタコに必要な機能はあらかじめ決められており、法定三要素(速度・時間・距離)と呼ばれる情報の記録機能が、最低限義務付けられています。法定三要素以外の機能は製品により異なり、搭載機能は様々です。

機能面におけるデジタコの種類分け
 
  • 単機能型:「速度」「時間」「距離」の法定三要素と呼ばれる情報収集機能限定端末
     
  • ●標準型:法定三要素に加え、ドライブレコーダーなどの外部機器との連携など可能な端末
     
  • ●多機能型:法定三要素に加え、アルコールチェックやメッセージ機能などが充実した端末

運転日報機能が搭載されたデジタコが便利

貨物運送事業において、道路交通法に定められている義務の一つに運転日報の記載があります。

安全運転管理者(運転者の安全運転を管理する者)は、道路交通法の74条に基づき、運転者に運転日報を記載させなければなりません。

運転日報とは、乗務において必要な情報が記載された書類です。運転日報は道路交通法及び貨物自動車運送事業輸送安全規則により、記載と保管が義務付けられています。

運転日報はアナログで記載することも可能ですが、デジタコの中には運転日報の出力機能を有する製品があります。運転日報機能を搭載したデジタコを使用すれば、アナログによる日報の記載作業は必要ありません。

デジタコを利用した運転日報の出力と確認方法

運転日報の記録と出力機能が搭載されたデジタコの、基本的な出力の流れをご紹介します。個別の方法に関しては、所有端末の使用方法をご確認下さい。
 

  1. 車載器に搭載された「帰庫」ボタンを押す
     
  2. 車載器内部で日報が自動作成
     
  3. 連携されている事業所のWEBサーバから日報を出力

デジタコ(タコグラフ)の使用に関する義務違反と罰則

デジタコの装着は法律で決められている義務であり、違反した場合には罰則が制定されています。

デジタコが未装着だった場合

デジタコ自体の装着を怠った場合には、記録義務違反に問われます。記録義務違反は行政処分の対象です。

  • ​記録義務違反:30日間の車両使用停止

デジタコに不備があった場合

不備の具体的内容は機器の状態により異なりますが、デジタコの故障や機能不全、メモリー(SD)カードを挿入していないといった状況が考えられます。

これらは運行記録計不備の違反に該当し、罰金刑が課せられます。

デジタコは装着するだけではなく、正常に使用できる状態を常に維持しなくてはなりません。デジタコの管理には、細心の注意を払う必要があるのです。

まとめ

貨物運送事業におけるデジタコの装着は、法律によって義務付けられています。対象車両は、必ずデジタコを装着しなければなりません。

デジタコによる正確な業務管理は、運転者の労働環境の是正や心身のストレス軽減に大きな効果をもたらすことが期待されています。

今後は、さらなる義務化範囲拡大が考えられます。現在は義務化対象外である車両であっても、導入環境を整えておく必要があるでしょう。

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