2023.02.10
運送業界
運送事業の点呼を自動化へ 乗務後自動点呼とは?
貨物運送事業者に対して義務づけられている点呼は、原則として対面によって行う必要がありました。
しかし、昨今の情報通信技術(ICT)の発展を鑑み、国土交通省はICTを活用した業務管理の高度化を検討。
2023年より、点呼を自動化するための制度が始まっています。この記事では、新たに開始された「自動点呼」について解説します。
目次
業務後自動点呼とは
法律により義務化されている点呼は、貨物運送事業者により選任された運行管理者が行う対面点呼です。運行管理者と運転者は顔を合わせ、飲酒の有無や疾病、疲労などを確認し、業務準備を行います。
自動点呼とは、特別な点呼機器を用いることで可能になる無人の点呼です。従来は運行管理者が行っていた点呼を、専用の点呼機器により自動化することができます。
自動点呼の運用に至っては、貨物運送事業における過酷な労働環境や、慢性的な人手不足などが関わっています。自動点呼は、事業従事者の物理的負担を軽減するための施策として実施された施策の一つなのです。
ただし、義務づけられているすべての点呼が自動化されたわけではありません。新たに開始された制度で自動化が認められたのは、従来義務づけられている「乗務前点呼」「乗務後点呼」「中間点呼」のうち「乗務後点呼」のみです。
乗務後自動点呼は2023年(令和5年)1月スタート
乗務後自動点呼の運用は、2023年の1月より開始されています。自動点呼では、自動点呼が可能な点呼機器が運行管理者の業務を代行します。
運行管理者には、非常時に対応できる体制こそ求められるものの、原則として立ち会う必要はありません。運転者は自動点呼機器の指示に従って点呼を行います。
乗務後自動点呼には、対面点呼では得られなかった様々な効果を期待することができます。
人的ミス(点呼の未実施や確認事項の漏れなど)の減少や、貨物事業従事者の業務負担是正、特定の疾病(新型コロナウイルスやその他の感染症など)に対する予防効果などは、乗務後自動点呼の実現によって期待される代表的な効果です。
乗務後自動点呼の導入に向けて必要なこと
乗務後自動点呼システムを導入するためには、国土交通省が定める2つの要件を満たす必要があります。
①然るべき点呼機器の準備
乗務後自動点呼を行うためには、国土交通省が認定した機器を使用しなければなりません。希望する認定機器を用意(購入するなど)し、環境を整えます。
②乗務後自動点呼申請の届出
使用する自動点呼機器を選定した後には、管轄の運輸支局長等に事前の届出が必要です。
原則として、実施の10日前までに届出書を提出しなければなりません。
自動点呼機器として認定を受けるには
- ●業務後点呼に必要な事項の確認や判断を記録できる機能を有していること
- ●個人を確実に識別できる生体認証機能を有していること
- ●点呼中の様子を静止画や動画で記録できること
- ●運転管理者と運転者の意思疎通が可能な画面表示や音声機能を有していること
- ●点呼が実施されない場合に、運行管理者等に警報や通知がされること など
- ●使用に必要な取扱説明書を提供し、説明できること
- ●自動点呼機器のトラブルに対する、修理体制を整えておくこと
- ●自動点呼機器の適切な品質管理がなされていること など
「点呼自動化」今後の流れ
2023年1月の時点で、自動点呼が認められているのは「業務後」のみとなります。その他の点呼では、従来と同様に対面点呼を行わなければなりません。
国土交通省は、アナログ業務をデジタル化し、ICTを活用することで運行管理業務を高度化することを目的とした「運行管理高度化検討会」を一定の間隔で実施しています。
令和4年度の第3回検討会では、ICTを活用した乗務前自動点呼や、運行管理業務の一元化の実現に向けた検討が行われました。
この検討会では、乗務前点呼導入へ向け、乗務員の健康状態の把握や運転者に対する指示事項の代替など、将来へ向けた様々な検討がなされています。
今後、検証結果を元にした実証実験を経て、乗務前点呼導入に向けた準備が加速していくでしょう。近い将来的には、貨物運送事業における全面的な自動点呼化が実現するかもしれません。
まとめ
ICT技術の発展と共に、今後さらなる自動化が期待される点呼業務。労働環境の改善や安全性の向上に対する施策として、今後のさらなる進化が期待されています。