2023.01.11
危機管理
トラック事故の主な原因は? 事故防止に必要なこと
日本国内の物流業界は、トラックの存在によって支えられているといっても過言ではありません。一般車両とは比べ物にならない距離を走行する物流トラックには、必然的に事故のリスクが付き纏います。
一概に事故といってもその原因や種類は様々であり、事故の状況は多岐に及びます。この記事では、より安全な運転環境を実現するために、トラック事故の具体的な原因や種類について解説します。
目次
トラック事故が及ぼす影響
国内の物流事情を語る上で、トラックが担う役割はとても重要です。国内物流の市場占有率は圧倒的に自動車であり、国内の高い需要を窺うことができます。しかし、車体の大きなトラックによる事故は、死亡事故や他車を巻き込んだ大規模なものになりやすいというリスクを孕んでいます。
トラック事故が及ぼす、具体的な影響を考えてみましょう。事故を起こした加害者や被害者はもちろんのこと、トラックを所有する企業(貨物運送会社等)など、当事者以外にも関連する団体にまで影響は波及していきます。
また、事故によって発生した渋滞や公共の交通機関の遅延など、直接事故と関わりのない第三者にまで、影響を及ぼす可能性もあるのです。
影響は実害も伴います。事故の内容次第では、法律的な刑罰や損害賠償が発生することもあるでしょう。また、加害者やトラックの所有企業に対するイメージの低下は、結果的に組織の経営にも影響を与えかねません。一度のトラック事故は、取り返しのつかない大きな悪影響を及ぼす可能性を秘めています。
トラック事故の原因
トラック事故が発生する背景には、具体的な原因が存在します。主な原因の多くは、安全運転義務違反と呼ばれる行為です。
漫然運転
漫然とは「いい加減に行う様」を表す熟語です。漫然運転とは、緊張感や危機意識が薄れた状態で行う惰性的な運転を指しています。
漫然運転は、長時間に及ぶ運転や慣れ親しんだ道筋における油断など、注意力が低下する環境下で発生します。漫然な状態では、正常時と同じ状況判断はできません。
わき見運転
運転以外の事柄に注意を取られ、視線を外した状態で行う運転です。周囲の景色やカーナビ、スマートフォンなど、運転中には意識を取られる要素が多く存在しています。一瞬だけわき見運転を行ったことが原因で、事故を引き起こしてしまう可能性は十分にあり得るのです。
周囲の不注視
運転席から見える景色には、安全運転に必要な情報が溢れています。道路標識はもちろん、対向車や歩行者の存在、急な飛び出しに渋滞や工事の有無など、運転環境は常に変化しています。これらの情報に対する意識の欠落が、重大な事故を引き起こします。
安全確認不足
見通しの悪い交差点や、路上駐車車両の影、狭い道の死角など、公道では丁寧な安全確認が義務づけられているポイントが多数存在します。そのような場所における確認義務を怠ったことで発生する事故は少なくありません。
トラック事故の種類
トラック事故は、様々な局面で発生します。中でも、過去の事例において割合の多い事故は以下の通りです。
追突
トラック事故における「追突」とは、車両が後ろから前方に突き当たる現象を指します。追突事故とは、後方の車両が前方の車両の後部にぶつかる事故です。追突事故の発生率は、内閣府が公開している資料により、確認することができます。
令和2年度に起こった交通事故発生件数を事故類型ごとに公開している資料では、追突事故は、9万5,520件(全体の30.9%)という高い割合を占めていることがわかります。これは年間に発生した事故の種類の中では最も多い数であり、改めて追突事故の危険性を証明する結果となっています。
〈参考〉内閣府 道路交通事故の動向 事故類型別交通事故発生件数(令和2年)
交差点などでの激突
交差点における激突は、追突に次いで多く発生している交通事故です。上述した資料によると、追突に次ぐ事故の類型は、「出会い頭衝突」、「右・左折時衝突」となっています。これらは、交差点などの道路が交差するエリアで発生する典型的な交通事故であり、車両同士が激しくぶつかり合うことが特徴的な交通事故です。
トラック事故を防止するために
トラック事故が発生する原因の多くは、運転者による過失です。トラック事故を防止するためには、運転者自身の安全運転に対する強い意識が必要不可欠です。以下に、日頃から注意しておきたいポイントをまとめました。
安全運転義務の遵守
最も重要な防止策は、法律に則った安全な運転です。道路交通法第70条には、安全運転の義務について必要事項が記載されています。
安全運転義務では、車両の運転者に対し、ハンドルやブレーキ、その他の装置の確実な操作と、道路・交通・車両の状況に応じて、他人に危害を及ぼさない速度と方法による運転を求めています。法律に準じた安全な運転を心がけることが、トラック事故防止の第一歩です。
過重労働の回避
過酷な労働条件下における継続的な運転は、心身に負担がかかります。トラック運転手の拘束時間と休憩時間は、労働基準法によって詳細が定められています。しかし、現実には過酷な労働による疲弊が原因となって、事故が起きていることも事実です。
長距離運転が求められるトラック運転手は、労働時間や環境に対する高い意識が要求されます。労働基準法に準じた適切な勤務は、トラック事故の抑止力になり得るのです。
日頃から十分な安全意識を持つ
安全運転義務に、やり過ぎということはありません。これで十分だ、と思うよりも一歩先へ踏み込んだ安全を意識しましょう。見通しの悪い交差点の確認回数を増やしたり、前方の車両との車間距離を以前よりも開くような些細な行いが、大きな事故を防止する予防策となります。
交通事故に関するリスクの共有
職場や現場において、日頃から事故を起こした際のリスクについて共有しておくことが大切です。トラック事故は、小さな気の緩みや不注意によって起こります。
事故のリスクについて意見を交わす場や、見識を深める時間を定期的に持ちましょう。運転手や、運送事業に従事する関係者すべての危険意識を高めておかなければなりません。
まとめ
日本国内では、毎年数十万件の交通事故が発生しています。事故の中には、重大な死傷事故も含まれています。トラック事故は、一般的な乗用車事故に比べて重大事故になりやすい危険性を孕んでいます。トラック運転手や運送事業関係者には、事故防止のための正しい知識と強い意思が必要なのです。