2022.03.26

危機管理

車両後退時の事故防止へ 車に搭載が義務化される「バックカメラ」とは

目次

2021年の6月9日、国土交通省は相次ぐ車両後退時の事故対策として、新たな法令の整備を発表しました。
この法令により、車両には後退時の状況を確認するための「バックカメラ」の搭載が、義務付けられることになります。

この記事では、新たに施行される法令の具体的な内容について解説します。

バックカメラ義務化の経緯

自動車に関連する安全基準は定期的に見直され、法律が改正されてきました。日本は、国際連合の規則に基づいて行われる認定の相互承認協定に加入しており、当該協定で決定された規則を段階的に採用しています。

 

今回、国際連合欧州経済委員会自動車基準調和世界フォーラム(WP29)において、車両に関する国際的な安全基準「安全基準後退時車両直後確認装置に係る協定規則」が採択されました。新たな規則の誕生に伴い、日本国内でもこれらの規則を導入することが決定しています。

 

新たな規則に基づき、改正された保安基準が制定されます。後退時車両確認装置の設置は新たに改正された保安基準であり、バックカメラを含む検知システムやミラーは、規則が示す装置に該当します。

具体的な基準

概要

上述の国際規則に基づき、法律が改正されます。(※一部抜粋)

 

道路運送車両の保安基準及び道路運送車両の保安基準の細目を定める告示の一部改正

 

自動車(二輪自動車等を除く)には、運転席において運転者が自動車の直後の状況を確認できる後退時車両確認装置を備えなければならない。

 

道路運送車両法施行規則の一部改正

 

国土交通大臣が指定する自動車について新規検査を申請する者は、提出書面に後退時車両確認装置の基準に適合する証明書を加える。

 

道路運送車両法関係手数料規則の一部改正

 

後退時車両確認装置の型式について指定を申請する者が、保安基準適合性の審査を受けるに際して納付すべき手数料の額を実費を勘定して定めるほか、所定の改正を行う。

 

〈参考〉

国土交通省 「道路運送車両の保安基準等の一部を改正する省令案及び道路運送車両の保安基準の細目を定める告示等の一部を改正する告示について

適用範囲

後退時車両確認装置の適用範囲は自動車です。ただし、二輪自動車、三輪自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車など、後退時車両確認装置を備えることが困難である一部の車両は除かれます。

要件

後退時車両確認装置は、以下の要件を満たさなければなりません。

 

①車両直後における、特定エリア内の障害物を確認できること

(特定のエリア:車体の後方0.3mの位置から3.5m、高さ0.8mの範囲まで。検知システムのみで障害物を確認する際の基準は一部異なる)

 

②確認の手段は、カメラ、検知システム、ミラーによること

(一部の車種に関しては、目視、目視とミラーの組み合わせによる確認。一定の条件下における確認手段の組み合わせも可能)

 

〈参考〉

国土交通省 「車両後退時の事故防止のための国際基準を導入します」

国土交通省 「後退時車両確認装置に係る基準」

適用時期について

後退時車両確認装置に係る協定規則公布及び施行は、令和3年6月9日に行われています。ただし、実際に規則が適用され、バックカメラなどの後退時車両確認装置が義務化される時期は異なります。

新型車は令和4年5月 継続生産車は令和6年5月から

国土交通省の発表によると、上述の時期に順次義務化される予定となっています。新型車とは、令和4年の5月以降に発売される車両を指し、継続生産車とは、現在継続生産されている同型モデル車両を指しています。

 

現在予定されている法改正は、車両を生産しているメーカーに対する義務化であり、すでに当該車両を所持している個人を対象にした改正ではありません。従って、現在所有している車両に、バックカメラなどの後退時車両確認装置が搭載されていない場合でも、車両を運転することは可能です。

 

しかし、今後の改正次第では、すべての車両に後退時車両確認装置を設置する必要が出てくる可能性があります。今回の法改正を契機に、後退時車両確認装置の需要が高まることは間違いないでしょう。

 

〈参考〉

国土交通省 「後退時車両確認装置に係る基準」

後退時車両確認装置の義務化による影響

後退による交通事故の減少

バックカメラなどの後退時車両確認装置を取り付ける最大の目的は、交通事故の減少です。後退による交通事故数では、死亡事故における相手側に「相手なし・物件等」が多いことがわかっています。

 

運転者自身が命を落とす可能性が高い後退事故では、バックカメラなどの後退時車両確認装置を取り付けることで、事故の減少が期待できるかもしれません。

新車車両本体価格の高騰

規則が適用されることにより、購入時の新車や継続生産車には、予めバックカメラなどの後退時車両確認装置が設置されることになります。

 

必然的に、車両の販売価格にはバックカメラなどの後退時車両確認装置価格が反映されることになり、車両の販売価格は高騰します。これまで以上に、購入者の金銭的負担が増加することが予想されます。

取り付けや管理が困難な車両の存在

バックカメラなどの後退時車両確認装置の設置義務は、様々な車両に及びます。車両によっては、上述した要件を満たす位置に、バックカメラなどの後退時車両確認装置を取り付けることが困難である場合もあるでしょう。

 

また、大型トラックなど、車両本体と荷室部分(コンテナなど)で製造元が異なる車両の場合には独自の問題が発生します。バックカメラなどの後退時車両確認装置の設置に関しては、予め設置位置を想定しておく必要があるのです。

 

異なるメーカーの製造物を組み合わせる車両であれば、企業間の意思疎通が必要になる可能性があり、企画や製造の段階で支障が発生することが懸念されます。

後付けする際の手間

バックカメラなどの後退時車両確認装置は、単独で市販されています。現時点で設置が義務化されている車両は新型車や生産継続車に限られますが、いずれはすべての車両が対象になる可能性もあるでしょう。

 

現在所有している車両に、バックカメラなどの後退時車両確認装置を設置することになれば、必要最低限の知識や設置の手間が発生します。また、運転者自身が、バックカメラなどの後退時車両確認装置を使いこなす技術が必要です。

まとめ

国土交通省が公布・施行した後退時車両確認装置に係る協定規則は、令和4年5月から適用されます。車両後退事故の減少、防止を目的として改正された規則ですが、様々な懸念点が存在することも事実です。仕事やプライベートで車両を使用する方は、今後の動向に注力しておきましょう。

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