2022.02.16

運送業界

運送事業における「点呼」業務|実施の目的や具体的な内容について

目次

自動車運送事業における「点呼」業務は、法令により実施が義務付けられています。
一概に点呼といっても、名前を呼ぶだけで済むような単純なものではなく、様々な確認項目が存在します。

この記事では、運送事業で行われている点呼の実態について解説します。

点呼の意義

概要

運送業務を行う際に、必要な確認作業です。点呼の実施や確認項目は法令によって決められており、事業者や運転者は規則に基づいた点呼を実施しなければなりません。

 

点呼は運行管理者(国家資格を取得した運送業務の管理者)または補助者によって、運転者を対象に実施されます。点呼の基本は対面式であり、運行管理者と運転者の間で報告や指示が行われます。

目的

点呼は安全の確保を目的として行われます。運転者は、運転業務を行うに相応しい状態を維持しなければなりません。

 

また、運転者を管理する者は、然るべき時期に運転者の状態を把握する必要があります。正しい情報に基づき、事故の防止を図るのです。

点呼の具体的な確認項目

点呼は乗務前と乗務後の2回実施され、対面点呼を行わない場合及び、貨物自動車運送事業者に関しては場合によっては中間点呼が追加されます。具体的には、運転者の現状に係る報告や、運行管理者から通達すべき指示などのやり取りが行われます。

1回目:乗務前点呼

  • ・報告を求める項目(日常点検の実施状況・酒気帯びの有無・病気(疾患)、疲労等の状況)
  • ・確認する項目(日常点検の実施状況・酒気帯びの有無・病気(疾患)、疲労等の状況・携行品の状況等)
  • ・指示する項目(運行安全を確保するために必要な指示(運行の道筋・運行時間・運行上の注意・運行経路の道路状況及び気象状況等))
  • ・記録する項目(点呼執行者の名前・運転者の名前・乗務する車両の登録番号・点呼日時・点呼方法(アルコール検知器の使用有無、対面以外の場合)酒気帯びの有無・病気(疾患)、疲労等の状況・日常点検の状況・指示項目・その他必要な項目)

中間点呼(対面点呼を行っていない場合(その他の方法を含む)、トラックに限る)

  • ・報告を求める項目(酒気帯びの有無・病気(疾患)、疲労等の状況)
  • ・確認する項目(酒気帯びの有無・病気(疾患)、疲労等の状況)
  • ・指示する項目(運行の安全を確保するために必要な指示(運行の道筋・運行時間・運行上の注意・運行経路の道路状況及び気象状況等)
  • ・記録する項目(点呼執行者の名前・運転者の名前・乗務する車両の登録番号・点呼日時・点呼方法(アルコール検知器の使用有無、対面以外の場合)・酒気帯びの有無・病気(疾患)、疲労等の状況・指示項目・その他必要な項目)

2回目:乗務後点呼

  • ・報告を求める項目(事業用自動車、道路かつ運行状況・事業用自動車の状況・事故又は異常の有無・運行した経路の道路、交通、気象の状況・交替運転者に対する通告(/乗務記録・チャート紙・携行品等の提出)
  • ・確認する項目(酒気帯びの有無)
  • ・指示する項目((運転者の運行状況(乗務記録、チャート紙)に対する指導/次回の運行予定)
  • ・記録する項目(点呼執行者の名前・運転者の名前・乗務する車両の登録番号・点呼日時・点呼方法(アルコール検知器の使用有無、対面以外の場合)自動車、道路及び運行の状況・酒気帯びの有無・交替運転者に対する通告・その他必要な項目)

〈参考〉国土交通省 自動車総合安全情報 「運転者に対する点呼の概要」

点呼の方法と規則

原則として対面が推奨されている点呼ですが、対面以外の方法も存在します。

対面以外の点呼

電話点呼

長距離トラックなど、目的地までの距離が遠い運送における対面点呼は困難です。電話点呼とは、物理的な事情で対面点呼が困難である場合に、運行管理者と運転者が電話等を利用して行う点呼です。

 

IT点呼

専用の測定機器を使用した点呼方法です。従来は対面や電話で行っていた業務を、機器を介して実施します。点呼に必要な運転者情報取得を条件として、運行管理者や運転者の物理的負担を軽減できる点呼です。

点呼内容の管理

点呼の際に必要項目を記録した点呼記録簿は、営業所に1年間保管しなければなりません。

普及が進むIT点呼

導入の目的と経緯

自動車運送事業では、業務に携わる者の負担軽減を目的とした働き方改革が促進されています。改革の一環として導入されている施策の一つが、IT機器を駆使したIT点呼です。

 

IT点呼導入には、従来の方法によって発生する業務負担が関わっています。対面点呼では、定められた場所で運行管理者と運転者が点呼を行う必要があります。この方法では、業務の効率化に支障を来す可能性が指摘されていました。

 

そこで導入された方法が、IT機器を用いたIT点呼です。IT点呼は、特定の条件を満たすことで導入することが可能です。

IT点呼の手段

IT機器を介して点呼が可能です。カメラやモニターを使用する事で、運行管理者と運転者が別の場所にいながら点呼を実施することができます。点呼の確認、記録項目は従来の方法と変わりません。

導入効果

物理的負担の軽減

運行管理者と運転者が対面する必要がなく、移動や労働の時間短縮効果を期待することができます。

感染症の予防

新型コロナウイルスに代表される感染症の予防には、物理的接触を避ける施策が効果的です。IT点呼であれば、従業員同士の不必要な接触を回避することができます。

保管に関して

IT点呼では、点呼によって得られた情報をデータで保存することが可能です。従来の点呼簿のように、物理的な保管や保存スペースを必要としません。

点呼を怠った場合には

自動車運送事業における点呼の実施は、重要な業務の一つです。万が一にも、点呼の未実施や省略などの行為は許されません。

 

国土交通省は自動車運転事業の法令違反に対して、点数制度を設けています。違反の内容によって点数が設定されており、累積点数に応じて然るべき行政処分が下されます。

 

主な行政処分

  • ・文書警告自動車の使用停止
  • ・事業停止
  • ・許可取消 など


〈参考〉

国土交通省 自動車総合安全情報 「行政処分の基準」

国土交通省 北陸信越運輸局 「自動車運送事業の最多違反は点呼!」

まとめ

点呼業務は、安全な業務を確保するために実施されており、省略することはできません。

これから自動車運送事業に参入する事業者や、従来の点呼方法の見直しを検討している営業所は、正しい点呼方法を習得し確実に点呼業務をこなしましょう。

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