2024.07.31
飲酒対策
地震などの緊急時、飲酒状態での運転は許されるのか?
飲酒運転は法律でも厳しい罰則が設けられており、絶対にやってはいけない行為です。しかし、飲酒している最中に緊急事態が起こったときはどうなのでしょうか?
令和6年1月1日に、能登半島地震が発生しました。正月という時期だけに、お酒が入った状態で避難した人もいるはずです。たとえば、その状態で避難のために仕方なく、車やバイクを運転しなければいけない場合、飲酒運転は許されるのでしょうか?
この記事では、地震などの緊急時などに、飲酒状態での運転は許されるのかどうかについて解説していきます。
目次
「緊急避難」では飲酒運転がやむを得ない場合もある
地震や火山の噴火など、突然の自然災害から避難する場合は、刑法・第三十七条の「緊急避難」が成立するため、たとえ飲酒運転であっても責任が問われない可能性があります。
(緊急避難)刑法・第三十七条 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。 引用:刑法 | e-Gov法令検索 |
地震などで避難する場合、飲酒運転でも罪に問われないかどうかは、「緊急避難」が成立するかどうかです。
自身や他人の生命財産を守るために、やむを得ずにした行為の場合、飲酒運転であっても緊急避難として認められ、罪に問われない可能性があります。
「緊急避難」の成立要件
緊急避難の成立要件は4つあり、以下の通りです。
①:現在の危難があること
②:避難の意思があること
③:補充性の原則
④:法益権衡
いずれかの4つの状態を証明できれば、緊急避難が成立します。そのため、飲酒運転でも罪に問われない可能性が高いです。
①:現在の危難があること
まさに今、危険が迫っている状態のことです。たとえば、地震による津波が迫っている状態、噴火によって大量の火山灰が舞っている状態。これらのケースは、「現在の危難があること」と言えるでしょう。
②:避難の意思があること
「避難の意思」とは、自己または他人の生命・身体・自由・財産を「守るため」の意思が、必要なことです。
③:補充性の原則
「補充の原則」とは、現在の危難を回避するために「ほかに方法がなく、やむを得ずしたこと」です。
生命の危機が迫っていて飲酒運転しなければいけない場合、ほかに方法がなくてやむを得ずした行為かどうか?それを証明できれば、飲酒運転であっても罪に問われない可能性が高いです。
④:法益権衡
「法益権衡の原則」とは、避難の意思にもとづく行為によって生じた害が、避けようとした害の程度よりも小さいこと、もしくは避けようとした害と同程度であることを指します。
たとえ避難するための飲酒運転であっても、それによって多くの人を轢いて死亡に追いやってしまっては、緊急避難は成立しないということです。
「緊急避難」が度を超えると「過剰避難」になる
地震などの突然の自然災害であれば、飲酒運転であっても罪に問われない可能性があります。しかし、場合によっては「緊急避難」ではなく、「過剰避難」とみなされるので注意してください。
過剰避難とは、避難行為がその程度を超えた状態で、「法益権衡」の要件を満たさないケースです。緊急避難を主張できる状況であったとしても、避難によって生じた害が、避けようとした害の程度を超えてしまうと過剰避難になります。
ただし、過剰避難は無罪にはならないものの、「情状酌量でその刑を減軽・免除することができる」と定められています。
緊急避難でも飲酒運転はできるだけ避ける
飲酒中に緊急避難をしなければいけない場合、車やバイクの運転以外に選択肢があるのなら、できればそちらを選択してください。
飲酒運転は、非常に危ない行為です。酩酊状態で車を運転しても、スムーズに避難できるとは限りません。特に地震などの災害では多くの避難者がいるため、ほかに避難している人を車やバイクで轢いてしまう危険性があります。
走ったり歩いたりして避難できるのであれば、飲酒運転よりも安全です。補充の原則の「ほかに方法がなく、やむを得ずしたこと」を除いては、緊急避難であっても飲酒運転は避けるようにしましょう。
まとめ
今回は地震などの緊急時、飲酒状態での運転は許されるのか、について解説しました。「緊急避難」を証明できれば、飲酒運転でも罪に問われない可能性がありますが、車やバイクの運転以外に選択肢がある場合は、そちらを選択してください。
日本は地震が多く、飲酒中にいきなり地震の被害に巻き込まれることもあります。補充の原則である「ほかに方法がなく、やむを得ずしたこと」という状態であれば、飲酒運転での避難も仕方ありません。しかし緊急避難であっても、飲酒運転はできるだけ避けるようにしてください。