2024.01.25
運送業界
物流業界が実現する「SDGs」とは?具体例や課題について
より良い世界を目指すための「SDGs」と呼ばれる国際目標をご存知でしょうか?
貧困・飢餓・雇用・環境など、持続可能な開発目標であるSDGsは、物流業界にも大きく関わる指標です。現在では、個々の物流企業や事業所にもSDGsを意識した施策が求められています。
この記事では、貨物運送事業におけるSDGsに対する取り組みや実例、今後の課題について解説します。
目次
SDGsとは
SDGsとは、2015年の国連サミットで採択された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標です。「地球上の誰一人として取り残さない(Leave No One Behind)」というスローガンのもと、様々な枠組みに捉われない地球規模の全体指標として誕生しました。
目標は「17のゴール・169のターゲット」により構成されています。SDGsは発展途上国に留まらず、先進国も率先して取り組まなければならない普遍的な目標です。
SDGs:2030年を年限とする17の国際目標
- 1.貧困:貧困をなくそう
- 2.飢餓:飢餓をゼロに
- 3.保健:すべての人に健康と福祉を
- 4.教育:質の高い教育をみんなに
- 5.ジェンダー:ジェンダー平等を実現しよう
- 6.水・衛生:安全な水とトイレを世界中に
- 7.エネルギー:エネルギーをみんなにそしてクリーンに
- 8.成長・雇用:働きがいも経済成長も
- 9.イノベーション:産業と技術革新の基盤をつくろう
- 10.不平等:人や国の不平等をなくそう
- 11.都市:住み続けられるまちづくりを
- 12.生産・消費:つくる責任つかう責任
- 13.気候変動:気候変動に具体的な対策を
- 14.海洋資源:海の豊かさを守ろう
- 15.陸上資源:陸の豊かさも守ろう
- 16.平和:平和と公正をすべての人に
- 17.実施手段:パートナーシップでも目標を達成しよう
〈参考〉外務省 SDGsとは?
物流業界に関わりの深いSDGs
17のゴールが定められているSDGsの中で、物流業界と直接的に関わる目標をまとめました。
SDGs7「エネルギー」:エネルギーをみんなに そしてクリーンに
主に、信頼できるエネルギーサービスへの普遍的アクセスや再生可能エネルギーの拡大、消費効率の改善率増加などを目標とします。
エネルギー効率および、環境負荷の低いクリーンエネルギーの研究や技術へのアクセスを促進し、地球温暖化の防止やエネルギー消費の効率化を促進していきます。物流業界では、運送に使用するトラックのハイブリッド化や低燃費化などが挙げられます。
SDGs8「成長・雇用」:働きがいも経済成長も
若者や障害者を含むすべての男女に働きがいのある仕事、同一労働同一賃金の達成を目標とします。強制労働を根絶し、労働者の権利を保護しつつ、安全・安心な労働環境実現を促進するための目標です。
SDGs9「イノベーション」:産業と技術革新の基盤をつくろう
包括的かつ持続可能な産業化を促進し、環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を目標とします。
人手不足が懸念される物流業界においては、デジタコなどの最新機器を導入することで安全性への取り組みを強化、持続可能な産業としての技術革新を促進しています。
SDGs13「気候変動」:気候変動の具体的な対策を
温室効果ガスの排出減少や脱炭素化を通じて、地球規模の気候変動を軽減するための目標です。気候変動対策を各国の政策に盛り込み、戦略や具体的な対策実施を推進します。
車両のエコドライブ運転や、アイドリングストップなどは、気候変動対策として物流業界が尽力できる施策の一つです。
物流業界のSDGsに対する具体的取り組み
物流業界では、SDGsに関する様々な取り組みを実践しています。具体的な内容は以下の通りです。
グリーン物流パートナーシップ
物流業界における環境負荷の低減や、生産性向上を目的とした持続可能な物流体系の構築に向け、荷主および物流事業者間の連携的な活動を普及促進する取り組みです。
SDGsにおける「エネルギー」や「気候変動」といった目標に対する取り組みや情報を業界内で共有し、地球にやさしい物流を目指します。
経済産業省や国土交通省、一般社団法人である物流連合会などが主催となり、優秀な取り組みに対しては表彰も行われます。
梱包資材の削減・転換
物流事業に使用する梱包材にはプラスチックなどが大量に使用されており、これらが廃棄されることにより産業廃棄物による環境汚染が進行します。
物流業界では、環境を害する素材に代わってリサイクル可能な段ボールなどを積極的に取り入れ、環境対策や積載効率アップに貢献しています。
運送・配送業務の共同化
複数の企業がトラックなどの運送手段を共有し、荷物を運ぶ施策です。運送手段を共有することで、配送の効率化とコストの削減、温室効果ガスの排出現象などのメリットが見込まれます。
また、ドライバーの長時間労働是正にも効果的であり、今後のさらなる普及が期待されている施策です。
モーダルシフト
運送・配送手段に鉄道や船舶を利用する施策です。従来のように、すべての荷物をトラックなどの車両に頼る方法を改善し、必要に応じて一部の道程に鉄道や船舶を利用します。
モーダルシフトを取り入れることで、長距離を運搬する際などの環境負荷やドライバーの肉体的負担を軽減できます。
物流業界のSDGs活動を支援する体制
物流業界とも関連性の深いSDGs。SDGsの国際目標を達成するために、国や民間団体は様々な支援を行っています。現在実施されている主な支援をまとめました。
ホワイト物流推進運動
トラック輸送の生産性の向上や物流の効率化、女性や高齢の運転者等も働きやすい労働環境の実現を目的とした運動です。
物流業界では、運転者不足に起因する長時間労働や肉体的負担が問題視されています。業界の諸問題を解決するためには、物流事業者と納品先関係企業の連携が必要不可欠です。
賛同企業の連携により物流業界の労働環境改善を図り、生産性の向上や温室効果ガス排出量の軽減を目指します。
物流総合効率化法
物流総合効率化法は、物流における輸送の合理化を目的とした事業に対する計画に認定や支援等を定めた法律です。物流業者が協力し合って業務の効率化や生産性向上に寄与した場合、国から様々な支援を受けることができます。
「減税制度」や「開発許可に対する配慮」、「計画策定経費や運行経費の補助」などが支援の具体的内容(一部抜粋)であり、所定の条件を満たすことで総合効率化計画として認定されます。
国が支援策を打ち出すことにより、物流業界全体の労働環境改善を促す狙いがあります。
〈参考〉
ホワイト物流推進運動について
国土交通省 物流総合効率化法
物流業界のSDGs達成へ向けて
SDGsとして掲げられている国際目標達成へ向け、様々な取り組みが進行している物流業界。しかし、取り組みが遅れている分野や項目があることも事実です。SDGsに取り組む際には、以下のポイントに留意しておかなければなりません。
すべての業務の標準化
すべての営業所や事業所において、隔たりのない物流業務を維持します。どの現場でも標準化された業務を展開することで、全体としての作業効率化や省エネ、労働環境の向上を期待することができます。
業界内・外の連携意識
業界内の連携はもちろん、国や支援団体との連携は不可欠です。同業者や他企業とコミュニケーションを深め、活発に情報交換を行うことで、業界全体としてSDGsへの意識を高めることが可能です。
まとめ
SDGsは国連が提唱する世界規模の達成目標です。物流業界では、以前から問題視されている課題が数多く存在します。それらの課題を一つひとつ解決していくことが、SDGs達成への近道となるでしょう。