2023.12.27

運送業界

「ライドシェア」とは? サービス概要や課題・国内の現状について解説

2023年現在、ネット界隈で話題となっている「ライドシェア」と呼ばれるサービスをご存知でしょうか? 国内でのサービス解禁の声も強くなっているライドシェアは、従来にはなかった新しい配車事業形態です。この記事では、まだまだ馴染みの薄いライドシェアの概要や、メリット・デメリット、問題点や課題について解説します。

目次

ライドシェアとは

ライドシェアとは車両の共有サービスです。主に相乗り配車サービスの総称として用いられています。ライドシェアの形態は様々であり、純粋な相乗りから多人数が同時利用できるものまで幅広いサービスが展開されています。
 
中でも日本国内において需要が高まっている形態は、アプリや専用のプラットフォームなどを用いて運転者と利用者を結びつけるタイプのカーマッチングサービス(TNCサービス)と呼ばれるスタイルです。
 
TNCは事前予約制の有償運送サービスであり、車両の所有者や運転者と同じ目的地に移動したい人をweb上で募り、需要と供給をマッチングさせることで相乗り走行を実現します。一般企業、パートナーシップ、個人事業主など、様々な形態の組織が存在しています。
 
海外では一般的となっているライドシェアサービスには、多くの企業や事業者が参入しています。運転者(サービスに登録している車両の所有者)と乗客(サービスに登録している車両を持たない同乗希望者)を仲介することで、効率的な有償運送サービスの提供に成功しています。

ライドシェア需要拡大の背景

日本国内でライドシェアサービスに対する需要が拡大している背景には、運送事業業界における人手不足問題が関係しています。
 
旅客自動車運送事業に従事する従業員の数は年々減少傾向にあり、2020年(令和2年)における法人タクシー車両数は約18万台、個人タクシーは約3万台となっています。2020年以降には新型コロナウィルスの影響もあり、さらなる離職が加速している現状です。
 
タクシー運転手の減少は、交通の便が悪い地方都市や過疎化が進行した集落などに大きな影響を及ぼし、重大な交通崩壊が懸念されています。ライドシェア需要の拡大には、深刻化する旅客事業業界の人手不足があるのです。
 
 
〈参考〉一般社団法人 全国ハイヤー・タクシー連合会 統計調査

日本と海外におけるライドシェア普及の現状

日本国内でライドシェアサービス(一般の運転者が運転する車両に相乗りするタイプのライドシェア)事業を運営する行為は、道路運送法によって禁止されています。
 
例外的に、一部過疎地域(国家戦略特区など)では移動手段として認められているものの、原則として営利目的のライドシェアサービス事業運営はできません。
 
一方、北アメリカや中南米、ヨーロッパやアジア諸国では、ライドシェアサービスを認めている国が増加しています。世界中に需要を拡大しているライドシェアの市場規模は、2028年に約30兆円に達すると試算されているほどです。
 
アメリカのカリフォルニア州では、2013年に自家用車ライドシェアサービス事業希望者に対して、許可制による参入が認可されました。他州においても制度化が進んでいます。
 
日本と同じアジア圏の国々では、中国や台湾、ベトナムなどでライドシェアの需要が拡大しており、一定の条件(保険加入や所定の運転歴など)を満たすことでサービスに参入可能です。

ライドシェアのメリット・デメリット

ライドシェアサービス運用には、サービスの提供者側(事業主)と利用者側(運転者や同乗者)双方においてメリットとデメリットがあります。

メリット

サービスに登録している個人の車両を使用するため、車両や雇用する従業員の数に縛られることなく事業運営が可能になります。自家用車を相乗り使用することで、環境負荷軽減効果も期待できるでしょう。
 
また、特定の営業所を必要としないことから、在来サービスが提供しづらい地方や過疎化地域の需要を満たし、消費者の利便性向上に貢献できます。
 
利用者側最大のメリットは、相乗りシステムにより、従来の旅客サービスに比べて割安な価格で利用できる点です。ライドシェアサービスが展開されている海外では、一般的なタクシーやレンタカーと比較し、2〜3割程度の費用軽減を実現しているケースもあります。

デメリット

事業を継続するために必要な、ドライバーの確保が難しい点が挙げられます。運転者の数や質を維持することは容易ではありません。運転者側も安定した収入を得られる保証はなく、旅客運送事業者に比べて不安定な働き方を覚悟する必要があるでしょう。
 
また、既存のライドシェアサービスの車両運転者は、旅客運送事業経験者ばかりではありません。運転手の資質問題(運転技術やサービス内容など)が原因となるトラブルは、少なからず発生しています。
 
また、ライドシェアに対応した法整備が間に合っていない国や地域も多く、事故やトラブルが発生した際の対応や補償など、曖昧な基準が利用時の不安要素となっています。

ライドシェア普及における問題点

世界需要の拡大とともに、国内サービス解禁の声も高まっているライドシェアサービス。しかし、解決しなければならない問題点があることも事実です。

法整備の問題

日本国内で有償のライドシェアサービスを展開するためには、既存の法律を整備(改正など)しなければなりません。
 
既存の法律下においてライドシェアサービスを解禁した場合には、特定の地域や報酬の有無によって様々な規制や制限が発生します。ライドシェア本来の利便性を生かしたサービスを自由に展開するためには、法律の改正や新しい制度の施行が必要でしょう。

旅客事業業界の反発

人材不足が大きな問題となっているタクシー業界は、ライドシェアサービスに反対しています。一部の過疎地など、旅客運送事業が手薄な地域はあるものの、人口減や過去の規制緩和による過剰供給によって全国的なタクシー需要は減少しています。
 
ライドシェアサービスの国内流入は、タクシー業界にとって利益圧迫の大きな要因となるため、参入に賛成できない現状があるのです。ライドシェアサービス解禁には、こうした競合他業界との権益問題を解決しなければなりません。

ライドシェアサービス導入への期待

国内導入までには様々な問題を解決しなければならないライドシェアサービスですが、懸念材料ばかりではありません。
 
現在では、配車アプリや飲酒運転防止システム、自動運転車両の進化など、テクノロジーの発展によって車両や運転の品質は日々向上しています。ライドシェアサービス車両や運転者に求められる旅客運送事業規則に基づいた輸送技術や安全保護水準は、これらの技術を利用できれば解決可能な問題です。
 
また、政府は特区制度や運送対象の拡大を順次行っており、国内各地ではライドシェアを見越した実証実験も開始されています。ライドシェア解禁に向けた動きは、着々と進行しているようです。
 
今後も、上述した問題を解決する手段を模索しながら、徐々にライドシェアサービス解禁に向けた動きが加速していくと考えられます。

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