2023.01.18

運送業界

運送会社は保険に入るべき? 運送業における保険の種類と内容

荷物の輸送事業を行う運送会社の業務は、常に交通事故のリスクを孕んでいます。起こり得るリスクに備えるために、然るべき保険に加入する会社も少なくありません。

ただし、加入の条件や保険の種類は、会社によって実情が異なります。この記事では、運送会社における保険加入の是非や、具体的な種類及び補償内容について解説します。

目次

運送会社が入るべき保険の種類

運送会社が入るべき保険には「自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)」と「任意保険」が存在します。

自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)

対人保険である自賠責保険は、自動車を運転する際には必須の保険であり、法律によって加入が義務づけられています。自賠責保険には、補償額や補償の範囲に制限が設けられており、事故の加害者や事故によって起こした損害(物損など)は補償対象外となります。

任意保険

一方で、「任意保険」に加入義務はありません。運送会社によって加入の有無や種類が異なる任意保険は、自賠責保険よりも広い範囲を補償することができます。

運送事業者が起こす交通事故では、加害者自身が被害を被る事例も多く、損害物が発生する可能性も高くなります。交通事故で起こり得るすべてのリスクに対して保険を適用するためには、自賠責保険だけでは不十分です。任意保険とは、自賠責保険で賄うことのできない補償範囲を補填するために必要な保険なのです。

運送会社が保険に入るメリットと注意点

任意保険に加入する際には、メリットと注意点を把握しておかなければなりません。

運送会社が保険に入るメリット

任意保険のメリットは、自賠責保険で賄いきれない範囲を補償できる点にあります。自賠責保険は事故被害者に対して、傷害・死亡・後遺症のいずれかの場合に、120万〜4,000万円の範囲内で補償金が支払われます。

しかし、交通事故の内容次第では、自賠責保険適用外の損害の発生や、補償金では賄いきれない賠償金が請求される事例も少なくありません。すべての賠償や補償を、自賠責保険のみで賄うことはできないのです。

任意保険に入る最も大きなメリットは、自賠責保険対象外の補償を賄うためといえるでしょう。

運送会社が保険に入る注意点

任意保険に入る際には、保険料に注意が必要です。補償内容が手厚く有用な任意保険ですが、補償の内容次第では高額な保険料が必要になります。複数の任意保険に加入する場合には、相応の資金が必要です。

規模の小さな運送会社の中には、資金的な問題から任意保険に加入していない企業も存在します。任意保険を検討する際には、高額になりがちな保険料を考慮しなければなりません。

また、任意保険の補償内容は多岐に及びます。保険によって補償や特約の範囲は異なり、個人や法人、トラック事業者や旅行事業者向けに特化した保険も存在します。契約者は、自分自身にあった保険を比較選択する必要があります。

任意保険の契約が、会社の規模によって「フリート契約」と「ノンフリート契約」に分かれる点にも注意が必要です。それぞれの契約には、契約方法や保険料の割引率など、細かな差異が存在します。任意保険に加入する際には、確認しておく必要があるでしょう。
 

  • フリート契約:所有・使用している車両の台数が10台以上
  • ノンフリート契約:所有・使用している車両の台数が9台以下

運送保険の補償内容

任意保険の補償内容は、個別の保険によって異なります。ここでは、「対人保険」と「対物保険」における補償内容の概要を解説します。

対人保険

対人賠償保険


事故の被害者に対して、なんらかの身体的損害を与えた際に適用される保険です。保険の内容は自賠責保険と変わりませんが、自賠責保険の保険金では賄うことのできない範囲を補償します。補償の範囲や保険金の額は、契約する対人賠償保険により異なります。
 

人身傷害保険


事故によって自分自身や同乗者が死亡したり、身体的損害を被ったりした際に適用される保険です。入院や手術に必要な治療費や、仕事の休業中の利益補填など、保険会社により補償範囲は異なります。

 

 

対物保険

対物賠償保険


事故の被害者が所有する車両やものに対して、損害を与えた際に適用される保険です。自賠責保険は対人保険であり、相手の車やものは適用範囲外です。

交通事故は、人以外にもなんらかの被害が発生する可能性が極めて高いという特徴があります。対物賠償保険は、任意保険の中でも重要度の高い保険といえるでしょう。
 

車両保険


事故によって自分自身の車両に被害を被った場合に、適用される保険です。衝突事故や自損事故、自然災害などによる損害に対応しています。
 

運送保険


正式名称を「運送業者貨物賠償責任保険」というこの保険は、運送会社や運送事業に従事する関係者にとって重要な保険です。事故によって、運送業者が運んでいる荷物に損害や盗難が発生した際に適用されます。運送中や保管中に、損害を被った荷物が対象となります。

運送会社は保険に入ることでリスク回避することが推奨される

規模の大きな運送会社の中には、特定の保険に加入せず、自社資金を積み立てることで危機対策を講じている事例も存在します。自社保険といわれるこの方法は、保険料を削減することが可能である一方、資金力などの面から実現できる企業は限られています。

大規模な交通事故を起こしてしまった場合には、甚大な被害や高額な損害賠償が発生することが想定されます。万が一のことを考慮するならば、保険会社が提供する保険に加入しておくと良いでしょう。

まとめ

事業として荷物の運搬を行う運送会社の職務には、交通事故のリスクが付き纏います。交通事故が起こった場合には、立場に関わらず様々な被害や賠償が発生するでしょう。運送会社は起こり得るリスクに対処するため、自社に合った保険に加入することが推奨されます。

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