2023.08.19
運送業界
マイカーを通勤・業務で使用する際に注意すべき内容や必要な車両管理とは?
近年では、通勤や業務に自家用車の使用を許可している企業が増加しています。業務の効率化や社員の物理的な負担軽減など、メリットの多い自家用車。
ただし、相応のリスクを伴う事実にも留意が必要です。この記事では、社員に自家用車使用を許可する際に、企業が知っておきたい法律や、具体的な車両管理方法について解説します。
目次
自家用車を通勤・業務に使用するメリット・デメリット
自家用車の使用に際して、想定されるメリットとデメリットをまとめました。
メリット
自家用車を使用する社員が、企業や取引先、作業現場などへ直行直帰できる利便性は大きなメリットです。移動の時間や労力を軽減でき、業務の効率化に繋がるでしょう。また、身近な車両を使用できるため、運転に対する心理的な障壁を軽減できます。
デメリット
自家用車の使用に関する法的な規制はありません。自家用車使用の有無は、各企業の判断に一任されています。各企業は、独自に車両を管理するためのルールを設けなければなりません。
また、自家用車を使用している社員が、トラブル(事故など)を起こすこともあるでしょう。有事の際には、企業にも責任が及ぶ可能性があります。
企業が問われる自家用車使用に関連する法的責任
自家用車を使用している社員が交通事故などのトラブルを起こした際、企業が問われる法的責任を確認します。
企業が負う法的責任
社員の自家用車使用に関連し、企業に課せられる法的責任は、以下の通りです。
- ●民法715条「使用者責任」
- 社員が他人に損害を発生させた場合、社員が所属する会社も被害者に対して損害賠償責任を負わなければならない
- ●自動車損害賠償保障法3条「運行供用者責任」
- 自動車の運行によって利益を得ることができる立場にある者は、その運行によって損害を発生させた場合、生じた損害に対して賠償責任を負わなければならない
企業が負う法的責任の目安
企業が自家用車の使用を禁じていた場合には、責任を負う必要はありません。また、企業や運転者本人が、自動車の運行に関して注意を怠らなかった場合や、被害者側に故意・過失が認められた場合なども、責任を免れる可能性があります。
対して、企業が自家用車の使用に対して明確な基準を設けていなかった場合や、社員の個人的な判断に委ねていた場合には、会社の法的責任が問われる可能性があるでしょう。
自家用車の使用に関する企業の対策
社員の自家用車使用に関するトラブルを回避するためには、自家用車使用規程を策定する必要があります。
自家用車使用規程とは
自家用車使用規程とは、社員が自家用車を使用する際の、具体的な使用範囲や会社の費用負担などの基準を定めた規程です。
万が一、自家用車に関するトラブル(事故などの問題)が発生した際には、策定した自家用車使用規程に基づいて対応します。
自家用車使用規程の項目事例
規程の具体的内容は、自家用車の使用を検討している企業が定めなければなりません。以下に、必要な項目の事例を明記します。
- ●自家用車の許可基準(距離や範囲など)
- ●自家用車の使用範囲(業務や通勤、私的使用など)
- ●使用の厳守事項(禁止行為など)
- ●駐車場について(場所や金銭的負担など)
- ●使用の有効期限について(具体的な使用期間など)
- ●許可の取り消しについて(許可を取り消す際の基準など)
- ●保険について(加入する保険の種類や基準など)
- ●費用負担について(会社の費用負担の金額や範囲について)
- ●法的責任について(トラブル時の責任範囲規定など)
上述した項目は、最低限の基本項目です。自家用車使用規程を策定する際には、自社の業務に促した項目を追加しましょう。
自家用車の通勤および業務使用における課税について
企業における給与には所得税が課税されますが、通常の給与に加算される通勤手当は非課税対象(一定額まで)です。通勤に自家用車を使用している場合も、例外ではありません。
非課税となる限度額については、一ヶ月辺りの限度額が片道の通勤距離に応じて決められています。また、自家用車を業務に使用している場合、ガソリン代等について企業が負担していたとしても、非課税の範疇と考えられます。
自家用車などで通勤している社員の非課税となる一ヶ月あたりの限度額
片道の通勤距離 | 一ヶ月あたりの限度額 |
2キロメートル未満 | 全額課税 |
2キロメートル以上10キロメートル未満 | 4,200円 |
10キロメートル以上15キロメートル未満 | 7,100円 |
15キロメートル以上25キロメートル未満 | 12,900円 |
25キロメートル以上35キロメートル未満 | 18,700円 |
35キロメートル以上45キロメートル未満 | 24,400円 |
45キロメートル以上55キロメートル未満 | 28,000円 |
55キロメートル以上 | 31,600円 |
〈参考〉国税庁 マイカー・自転車通勤者の通勤手当
自家用車の通勤および業務使用における保険料について
社員に自家用車の使用を許可する際には、保険の有無や内容を確認しておく必要があります。一般的な自動車保険は、「日常・レジャー用」「通勤・通学用」「業務用」の3種類に分けられており、保険の範囲や負担金額も異なっています。
社員が自家用車で事故を起こし、加入している保険が補償対象外だった場合には、上述の法的責任に基づいて企業側に賠償責任が発生する可能性があるのです。
対策としては、企業として共済・任意保険に加入、社員の加入保険の種類を変更する(例:「日常・レジャー用」→「業務用」)などが考えられます。
保険料の負担責任
自動車保険は、加入が義務付けられている自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)と、任意保険に分けられます。
自家用車に関する保険料の負担に関しては、一律の基準はありません。一般的には、自賠責保険料と任意自動車保険料の半額〜全額を負担する企業が多いようです。
まとめ
自家用車を使用した通勤や業務には、メリットとデメリットが存在します。通勤中や業務中になんらかのトラブルが起こった際には、当事者のみならず、企業側にも責任が及ぶ可能性があります。
自家用車の使用を許可する場合には、自家用車使用規程を策定し、適切な管理の下に実施すべきでしょう。