2023.07.06

運送業界

個人事業主が運送業許可を取得するには?必要な条件や手続きの流れについて

個人事業主として貨物自動車運送事業を始める際には、然るべき許可が必要になります。貨物自動車運送事業法により定められている「運送業許可」制度。

この記事では、これから個人事業主として運送業を始めたい方へ向け、運送業許可の内容について解説します。

目次

運送業許可の原則

貨物自動車運送事業法では、運送業を「他人や特定の者の需要に応じて有償で自動車を使用して貨物を運送する事業」と定義しています。
 
国内で貨物を輸送する際に賃金が発生する場合には、原則として運送業許可が必要になります。運送業許可は法人だけでなく、個人事業主にも適用されます。

貨物自動車運送業の種類

個人事業主として貨物自動車運送業を始める場合、対象となる事業は3種です。これらの事業を始めるためには、定められた運送業許可・届出を申請しなければなりません。
 

 

運送業の種類 事業内容 運送業許可の要件
一般貨物自動車運送事業 事業用の自動車を使用し、複数の依頼主からの貨物を有償で運送する事業。一般的なトラック運送業に該当する                          許可制(許可要件はほぼ同じ)国土交通大臣または地方運輸局長の許可が必要
特定貨物自動車運送事業 事業用の自動車を使用し、特定(一社)依頼主からの貨物を有償で運送する事業。     
貨物軽自動車運送事業 軽自動車・排気量125cc以上の自動二輪車を使用し、貨物を有償で運送する事業      届出制

運送業許可申請の要件(一般貨物自動車)

個人事業主として運送事業許可を申請するためには、国が定めた条件を満たす必要があります。一般貨物自動車運送事業を始める際に必要な条件は、以下の通りです。

欠格事由に関して

法律上の特定範囲に該当する個人事業主は、運送業許可を取得することはできません。対象は、貨物自動車運送事業法第5条に記載されている8つの条件に該当する人物です。
 
〈参考 貨物自動車運送事業法 第5条 欠格事由

人員に関して

一般貨物自動車運送事業を始めるためには、最低限以下の人材を確保しなければなりません。
 

  • ●運転手(ドライバー)5人以上
  • ●運行管理者1名以上
  • ●整備管理者1名以上

設備に関して

運送業を始めるにあたって、必要になる事業設備の要件です。
 

  • ●営業所・休憩仮眠室:(都市計画法・農地法・建築基準法等に違反しない など)
  • ●車庫:(原則として営業所に併設、車両の相互間隔は50cm以上確保 など)
  • ●車両:(5台以上 など)

資金に関して

運送業を始めるためには、一定額以上の自己資金が必要です。運送業許可申請の際には、個人事業主の資金力を証明する必要があるためです。
 
運送業許可を取得するためには、開業以降6ヶ月間に必要とされる資金(人件費・賃料・保険料など)を確保していることが条件です。

法令試験に関して

必要な法律や、関連法令などの知識を確認するための試験です。個人事業主の場合には、申請する本人が受験しなければなりません。法令試験は運送許可申請を完了した後に行います。
 
不合格の場合には再度の受験が必要ですが、2回連続で不合格であれば申請は取り下げられます。再び法令試験に望む場合には、新たな申請が必要です。

運送業許可に必要な書類(一般貨物自動車)

運送業許可申請の条件が整った後には、それらを証明するための公的書類を準備します。個人事業主として、一般貨物自動車事業の運送業許可申請に必要な書類は、以下の通りです。

  • ●一般貨物自動車運送事業経営許可申請書
  • ●運送事業計画書
  • ●事業用自動車の運行管理体制を記載した書類
  • ●事業の開始に要する資金の調達方法を記載した書類
  • ●各施設[営業所・休憩仮眠室・車庫]が都市計画法、農地法、建築基準法に抵触しないことの書面
  • ●各施設[営業所・休憩仮眠室・車庫]が都市計画法、農地法、建築基準法に抵触しないことの書面
  • ●施設[営業所・休憩仮眠室・車庫]の使用権原を証する書面 自己所有・・・不動産登記簿謄本など 借入・・・賃貸借契約書など
  • ●車庫前面道路の道路幅員証明書 
  • ●計画する事業用自動車の使用権原を証する書面
    • ◇車両購入・・・売買契約書の写し又は売渡承諾書など
    • ◇リース・・・ 自動車リース契約書の写し  自己所有・・・自動車検査証の写し

欠格事由に該当しない旨の書面・個人事業主が許可を受ける場合

  • ●イ:資産目録(残高証明書)
  • ●ロ:戸籍抄本
  • ●ハ:履歴書

既存の法人が受ける場合

  • ●イ:定款(又は寄付行為)及び登記簿の謄本
  • ●ロ:最近の事業年度における貸借対照表
  • ●ハ:役員又は社員の名簿及び履歴書(監査役も含む)

新規法人を設立して許可を受ける場合
 

  • ●イ:定款または、寄付行為の謄本
  • ●ロ:発起人または、設立者の名簿及び履歴書
  • ●ハ:株式会社の場合は株式の引き受けの状況及び見込みを記載した書類

運送業許可申請の流れ(一般貨物自動車)

申請書類が準備できた後には、然るべき機関に書類を提出します。提出後の具体的な流れを確認しておきましょう。

①申請書類の提出

許可申請窓口は、運送事業の営業所の地域を管轄する地方運輸支局です。提出書類の審査は、数ヶ月の間に行われます。申請者は、書類審査の期間中に法令試験等の準備を行います。

〈参考 全国運輸支局等のご案内

②運輸局側で審査を行う

 結果が出るまで4~5か月かかります。その間開業に向けて行えるのが下記になります。

③法令試験の受験

法令試験は2ヶ月に一度行われます。合格しなければ運送業許可は取得できません。
不合格が2回続きますと一旦申請が取り消されます。

④預金残高証明書の提出

書類申請の後には、地方運輸支局から預金残高証明書提出の通知が送られます。申請時に資産目録を提出していますが、再度の提出が求められます。

⑤社会保険等に加入

法人の場合、従業員や役員全員が社会保険等に加入しておくことが必須です。
健康保険だけでなく、厚生年金・労災保険・雇用保険への加入も必要です。

許可を取得後、従業員の保険加入の証明書を提出しなければならないので、必ず必要な手続きです。後回しにせず早めの手続きをお勧めいたします。

⑥許可取得通知と交付

運輸支局の書類審査が終了し、法令試験に合格すると、運輸支局から運送業許可取得の通知が入ります。運送業許可証の交付は、営業所を管轄する運輸支局で行われます。

⑦登録免許税の納付

運送業の開業には、登録免許税法に基づき登録免許税(12万円)を納付する必要があります。納付は銀行や郵便局で可能です。

⑧運輸開始前確認書類の提出

運輸開始前確認書類(運行管理者・整備管理者の選任届、従業員の各種保険加入を証明する書類、労働基準監督署の受付印のある協定書の写し)を、管轄する運輸支局に提出します。

⑨事業用自動車等連絡書の受領

上述の書類が受領された後に発行される書類です。一般車における車庫証明にあたります。

⑩事業用ナンバーの取得

運送事業に使用する車両ナンバーです。一般貨物自動車運送事業におけるナンバーカラーは緑です。

⑪運送業開業

運送事業を開始します。運輸開始届および運賃料金設定届を提出します。

運送業許可申請の要件(貨物軽自動車)

個人事業主として貨物軽自動車事業を始める際にも、あらかじめ公示されている要件を満たす必要があります。

車両に関して

事業用に使用する車両は、乗車定員や最大積載量、構造等が貨物軽自動車として不適切でないことが求められます。

設備に関して

乗務員が有効に利用できる施設であることが必要です。車庫は営業所から2km以内に8㎡以上のスペースを確保し、都市計画法・農地法・建築基準法等に違反してはいけません。自宅を設備として利用しても構いません。

運送約款(やっかん)に関して

事業に関する定型的な契約条項です。国土交通省が公示している標準約款を使用しましょう。国土交通大臣が定めて公示した標準約款を使用する場合その旨を記載することにより約款の添付は不要になります。

運行管理体制に関して

運行管理者は不要です。事業の適切な運営確保のために、運航管理等の管理体制を整えているものであることが必要です。

損害賠償能力に関して

自動車損害賠償保障法等に基づき、保険への加入が義務づけられています。

運送業許可に必要な書類(貨物軽自動車)

個人事業主として貨物軽自動車事業の運送業許可申請には、以下の書類が必要です。車検証以外は、運輸支局の公式HPからダウンロード可能です。
 

  • ●貨物軽自動車運送事業経営届出書
  • ●運賃料金表2部
  • ●運賃料金設定届
  • ●事業用自動車等連絡書
  • ●車検証の写し

運送業許可申請の流れ(貨物軽自動車)

要件を満たし、必要な書類を準備した後には、具体的な申請に入ります。貨物軽自動車運送事業の申請は、一般貨物自動車事業に比べて簡易的です。届出当日に営業ナンバーを取得できます。

①必要書類の提出

上述した必要書類を、まとめて管轄運輸支局の担当窓口に提出します。

②管轄の運輸支局にて書類の審査

提出書類は公示基準に則り審査されます。一般貨物自動車事業のような法令試験はありません。

③事業用自動車等連絡書の発行

書類に不備がなければ、その場で事業用自動車等連絡書が発行されます。

④軽自動車検査協会でナンバー申請

軽自動車検査協会で黒ナンバーの発行手続きを行いましょう。ナンバー申請の際には、事業用自動車等連絡書が必要になります。
 
〈参考 軽自動車検査協会

⑤事業開始

該当車両に該当ナンバーを取り付け、事業開始です。

個人事業主として貨物運送事業を行う際の注意点

個人事業主として貨物運送事業を始める際には、注意しておかねばならない点があります。

運送業許可は必要不可欠

貨物運送事業に従事する際には、上述した運送業許可が必要不可欠です。一般貨物自動車事業および貨物軽自動車事業に必要な要件を満たし、所定のナンバーを取得しなければなりません。運送業許可を取得せずに行う事業は、違法行為です。
 
ただし、自社の荷物を運ぶ際や、他社の荷物であっても運賃が発生しない場合など、無償による運搬であれば運送業許可を取得する必要はありません。

白ナンバーは使用できない

白ナンバー車両は、自家用・商用車用ナンバーです。事業用として有償で人や物を運ぶことはできません。

法人や個人事業主に関わらず、貨物運送事業を行う際には、所定のナンバーを取得しなければなりません。

一般貨物自動車事業は一人で開業できない

一般貨物自動車事業は、単独開業できません。一人では運送業許可要件を満たせないためです。

一人で自動車事業を開業するためには、貨物軽自動車事業を選択する必要があります。

まとめ

貨物運送事業を始める際には、運送業許可を取得しなければなりません。許可取得には、必要な要件や定められた手続きが必要です。

貨物運送事業開業を検討している方は、運送業許可の基準や方法を確認し、万全の準備で臨みましょう。

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