2025.01.23
運送業界
物流業界の2025年問題「2025年の崖」とは?2024年問題との関係性、対策について
2024年は、働き方改革関連法(労働者の労働環境改善を目的として制定された法律)の改正によって、物流業界で「2024年問題」が話題となりました。
そして、2025年は「2025年問題」いわゆる「2025年の崖」というものが存在します。今回の記事では「2025年の崖」の内容を詳しく解説して、クリアするにはどうすれば良いのかを解説していきます。
目次
2025年問題「2025年の崖」とは?
「2025年の崖」とは、経済産業省のレポート「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開」に登場した言葉です。
内容としては、企業に対して「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の必要性を訴えるものです。
現在ではあらゆる産業において、デジタル技術を活用したビジネスの推進、いわゆる「DX推進」が求められています。ただし「DX推進」は現状、円滑には進んでいません。
2025年以降、老朽化した古いシステムを使うことで、業務の効率性を損ねる結果に繋がるリスクが予想されています。
しかし、現状は「DX推進」を望んでも、経営や現場の抵抗に遭うこともあり、どのように「DX推進」を進めていくかという点が課題になっています。
出典:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開
物流業界における「2025年の崖」
物流業界においても「2025年の崖」は他人事ではありません。物流の現場では、荷物の仕分けや輸送、検品などにITシステムを導入して業務の効率化を図っています。
しかし、現在の物流業界において、ITシステムの導入による業務の効率化は不十分と言わざるを得ません。なぜならば、ITシステムが統一した仕様やスペックで進められてきたわけではないからです。
荷物の種類や作業動線の変化などに合わせて、システムを独自にカスタマイズが施されています。つまり、システムを部分的に最適化したことにより、全体でみると基幹システムとしてブラックボックス化が顕著になっている事例が目立ちます。
物流業界では新型コロナウイルス以降、取り扱う荷物の量が増えて、荷物の種類も急激に多様化しました。老朽化した基幹システムでは、対応に限界が来ています。
そのため、「DX推進」が注目されるようになってきました。いわば、レガシーシステムによる2025年の崖を回避する手段として熱い視線を集めているのが、「DX推進」なのです。
「2025年の崖」の原因と問題点
「2025年の崖」の原因は前述でも触れましたが、企業が利用する古いシステムです。この古いシステムのことを、「レガシーシステム」と言います。
「レガシーシステム」の問題点は、ITシステムが統一した仕様やスペックで進められてきたわけではなく、独自にカスタマイズが施されていたこと。そして、システムを開発した人材が退職して、中身がブラックボックス化していることです。
部門ごとに異なるITシステムを導入している場合、システム同士の互換性が取れません。そのため、業務の効率化とは程遠い結果となるのが問題です。
「2024年問題」との関係性
「2024年問題」とは、働き方改革関連法(労働者の労働環境改善を目的として制定された法律)の改正によって、物流業界のドライバーに対して懸念される不利益を指した総称です。
2024年4月以降、トラックドライバーの労働時間の上限が、次の表のように変化しました。
トラックドライバーの改善基準告示の改正
〜2024年3月31日 | 2024年4月1日〜 | |
1年間の拘束時間 | 3,516時間 | 原則:3,300時間 最大:3,400時間 |
1ヶ月の拘束時間 | 原則:293時間 最大:320時間 |
原則:284時間 最大:310時間 |
1日の休息時間 | 継続8時間 | 継続11時間を基本とし、継続9時間 |
連続運転時間 | 4時間を超えないこと (30分以上の休憩等の確保、1回10分以上で分割可) |
4時間を超えないこと (30分以上の休憩の確保、1回概ね10分以上で分割可) |
時間外労働の上限規制 | 年間1,176時間 | 年間960時間 |
労働時間の上限規制がされたことで、ドライバーがトラックを運転する時間が減りました。
そのため今後は、輸送できる荷物の量の減少が避けられず、輸送のキャパシティーを落とさないためには、ドライバー数の増員が必要です。
ただし2025年には、団塊の世代・約800万人が75歳以上の後期高齢者になるため、国民の約4分の1が高齢者になると言われており、労働力人口の減少といった課題があります。
日本全体で労働力人口の減少が叫ばれるなか、物流業界ではドライバー数を増員しなければいけません。ドライバー数の増員には、労働環境や労働条件の改善、低賃金の問題をクリアする必要があります。
また、ITシステムを活用した自動化や、輸送の効率化による生産性向上が急務です。そのため「2024年問題」は「2025年問題(2025年の崖)」とセットで考えることが重要です。
「2024年問題」については、こちらの記事でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:2024年問題とは?物流業界に懸念される影響や課題について | SAFETY LIFE MEDIA | アルコール検知器(アルコールチェッカー)ソシアック | 中央自動車工業株式会社
物流業界が「2025年の崖」をクリアするには?
物流業界全体として「2025年の崖」に対して、指を加えて見ているわけではありません。
「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開」では、対応策の検討にも触れており、物流業界のなかにも、レガシーシステムからの脱却を図る企業が存在します。
物流業界が「2025年の崖」をクリアするには、既存システムを把握して、新しいシステムの導入を検討すること。そして、DXの必要性を全従業員に共有することが大切です。
- 1.既存システムの把握(レガシーシステムの不具合や問題点)
- 2.新しいシステム導入の検討
- 3.DXの必要性を全従業員に共有
まずは、既存システムの不具合や非効率な部分を明確にして、改善の優先順位を設定することしましょう。
そして既存システムの課題を把握したら、次はシステムの変更、リプレイスなどを必要に応じて検討します。
新しいシステムの導入には、大きな初期投資が必要不可欠です。しかし、運用コスト削減やサービス改善も含めて、長期的な費用対効果は計り知れません。
長期的な費用対効果を具現化できたら、従業員に共有して新しいシステムの研修を開催します。従業員にDX推進の利便性と必要性を共有して、理解してもらうことが大切なポイントです。成功事例を挙げながら、組織内におけるDXの重要性を共有してください。
まとめ
「2025年の崖」は日本の産業全体における課題ですが、物流業界は特に遅れをとっていると言われています。物流業界は重要な社会インフラのため、解決は急務です。
まずは既存システムの問題点を把握し、新しいシステム導入を検討してください。従業員にも納得してもらうよう、利便性を説明しながらDX推進をしましょう。