2022.03.07

運送業界

運送業務軽減に効果的な「IT点呼」とは 利用のルールや必要な準備

目次

自動車運送事業における点呼業務は、法令により定められています。
本来は対面式で行われる点呼ですが、一定の条件を満たすことでIT機器を用いた点呼が可能になりました。

この記事では、ITシステムを検討している自動車運送事業者へ向けて、「IT点呼」の導入方法や必要な準備について解説します。

IT点呼システムの概要

日本では働き方改革関連法の成立を契機に、労働基準法の見直しが促進されています。自動車運送業界では、時間外労働などの長時間労働の是正や、業務の効率化を目的とした試みが行われてきました。

 

IT点呼の導入は、働き方改革による業務改の代表的な施策です。従来の対面で実施されてきた点呼方法に加え、IT機器(パソコン、テレビ電話、カメラ、専用の検知器など)を駆使することで、対面と遜色ない点呼環境を実現することができます。

 

点呼の実施は、運行管理者(事業用自動車を管理する国家資格)が運転者に対して行わなければなりません。対面点呼では、当事者同士が直接顔を合わせる必要があります。しかし、IT点呼は遠隔点呼であり、離れた場所から画面を介した点呼が可能です。

IT点呼の導入条件

①Gマークの取得

国土交通省は、自動車運送事業所の安全性を評価する認定制度を設けています。Gマーク制度(貨物自動車運送事業安全性評価事業)と呼ばれるこの制度は、事業の安全性確保に取り組んでいる事業所に認定証を与えています。安全評価委員会から安全性優良事業所として認定を受けた事業所には、シンボルマークであるGマークが贈られます。

 

IT点呼を導入するためには、点呼者が所属する営業所と運転者が所属する営業所の双方が、Gマークを取得していなければなりません。

取得方法

Gマーク取得には、申請書類及び添付書類を地方実施機関(都道府県のトラック協会)へ提出します。その後、安全性評価委員会により然るべき判断が下されます。

 

※Gマークの申請自体にも必要条件が存在します。詳しくは以下の参考資料をご確認ください。

 

〈参考〉 国土交通省 「Gマーク制度」

②一定の条件を満たす

Gマーク認定を受けていない営業所がIT点呼を導入する際には、以下の条件を満たす必要があります。

 

  • 事業開始から3年が経過している
  • 過去3年間で、第1当事者となる自動車事故報告規則に抵触する事故を起こしていない
  • 過去3年間で、点呼の実施違反に関係する行政処分を受けていない
  • 適正化実施機関における最新の巡回指導評価が「D」「E」判定以外であり、点呼に関連する指摘がない。または、あった場合においても改善報告書が3ヶ月以内に提出され、実際に改善されている

 

〈参考〉 公益社団法人 全日本トラック協会 「Gマーク制度」

IT点呼導入までの準備と流れ

IT点呼に必要な測定機器は、国土交通省が認定したものを使用する必要があります。認定機器は資料から確認することが可能です。

(〈参考〉に記載)導入する機器の種類やメーカーを選定し、それぞれのHPに記載された購入方法に基づき手続きを行います。

 

尚、認定機器(主にIT点呼システムを導入したソフトウェア)の利用にあたっては、必要な周辺機器も準備しなければなりません。IT点呼導入に際して、必要になる機器は以下の通りです。


事前準備が必要な機器
 

  • ・点呼管理ソフトウェア(点呼の実施やチャット、映像・記録保存など点呼業務に必要)
  • ・カメラ内蔵型パソコン(カメラがない場合には別途用意)
  • ・スマートフォン(スマートフォン対応のソフトウェアの場合)
  • ・プリンター(データの印刷に必要)
  • ・マイク(パソコンに内蔵されていない場合)
  • ・免許証リーダー(ICカードで有効期限を読み取る場合)
  • ・アルコール検知器(パソコンに対応しているもの)


〈参考〉 IT点呼 「認定機器一覧」

②運輸支局へ申請

IT点呼の運用環境を整えた後には、国土交通省の地方支部部局である運輸支局に申請書を提出します。

IT点呼を行う営業所や車庫の情報と共に、所定の添付書類が必要です。

申請は、IT点呼開始予定日の10日前までに行いましょう。


〈参考〉 関東運輸支局 「東京運輸支局」

③可動前の調整

営業所において、IT点呼の操作トレーニングを実施します。また、実施後の業務計画を調整します。

④本格可動

IT点呼業務を開始します。点呼において得た情報は、点呼者(運行管理者)と運転者が使用する、それぞれの機器で保存していることを確認します。

IT点呼の実施方法と注意事項

IT点呼による具体的な点呼方法を解説します。(使用するソフトウェアや周辺機器により、方法の詳細は異なります)

 

手順1:所定のタイミングでIT点呼システムを立ち上げる

運行管理者と運転者の双方で準備します。

 

手順2:アルコール検知器による酒気帯び有無の確認

測定結果がソフトウェアを通じて、点呼者に通知されます。

 

手順3:パソコンを使用して対面

点呼者と運転者がモニターを介して対面します。

 

手順4:点呼を開始

法令に基づいて、点呼を実施します。

 

手順5:運行業務開始

IT点呼を終了し、運行業務を開始します。

 

注意事項

点呼実施者について

点呼の実施は、運行管理者が行います。ただし、特定の範囲において、運行管理者が行う業務の一部を運行管理補助者が行うことも可能です。


IT点呼の実施時間について

IT点呼は1営業日の中で、連続する実施を16時間以内(営業所と所属車庫間には制限なし)に納める必要があります。

IT点呼の範囲について

Gマークを取得している営業所では、営

業所と車庫間、車庫と車庫間におけるIT点呼の実施が認められています。

IT点呼制度の要件拡大及び緩和について

IT点呼の要件は定期的に改正され、Gマークの有無による格差是正が進んでいます。現在では、Gマーク認定を受けていない営業所においても、営業所と車庫間におけるIT点呼が可能になるなど、適用範囲が拡大しています。

 

また、IT点呼により得られた情報は、営業所に設置された端末(パソコン)に記録・保存する必要がありました。しかし、要件緩和に伴い、現在ではクラウド型(インターネット上に保存する)の情報管理が可能になっています。

まとめ

自動車運送事業は、長時間労働や時間外労働の常態化が問題になっています。働き方改革の一環として導入されたIT点呼は、業務の効率化や従業員の負担軽減に効果的なシステムです。上手に利用することができれば、従来よりも高い生産性を期待することができるでしょう。

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